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ヘーゲル『哲学入門』中級 第一篇 序論 第三節[実在論と観念論]

2023年04月10日 | ヘーゲル『哲学入門』

 

ヘーゲル『哲学入門』中級 第一篇 序論 第三節[実在論と観念論]

§3

Indem im Wissen die Dinge und ihre Bestimmungen(※1)sind, ist einerseits die Vorstellung möglich, dass dieselben(※2) an und für sich (※3)außer dem Bewusstsein sind und diesem schlechthin als ein Fremdes und Fertiges gegeben werden; andererseits aber, indem das Bewusstsein dem Wissen eben so wesentlich ist, (※4)wird auch die Vorstellung möglich, dass das Bewusstsein diese seine Welt sich selbst setzt und die Bestimmungen derselben durch sein Verhalten und seine Tätigkeit (※5)ganz oder zum Teil selbst her­vorbringe oder modifiziere. (※6)Die erstere Vorstellungsweise ist der Realismus, die andere der Idealismus genannt worden. Hier sind die allgemeinen Bestimmungen der Dinge nur überhaupt als bestimmte Beziehung vom Objekt auf das Subjekt zu be­trachten.(※7)

第三節[実在論と観念論]

知識のうちには物とその規定とがあるから、一面においては、物自体は本来的にも、かつそれ自体として(独立して)意識の外にあって、そして、これらは全く外来品とか出来合品として与えられたもののように考えることもできる。しかし、他面においては、知識にとって、意識はまさに本質的なものであるゆえに、意識は自分の知識の世界を自分自身で設定し、自分の行為と行動を通してその規定自体の全体を、あるいは部分を自身で作り出すか、あるいは改変すると考えることもできる。はじめの考え方は「実在論」と、他方は「観念論」とよばれる。ここでは、ただ一般的に、物の普遍的な規定は、客観から主観に対して指定された関係とみなされなければならない。

 

※1
 die Dinge und ihre Bestimmungen
「鉄は黒い」という私たちの知識で言うなら、物は鉄で、「黒い」が規定である。

※2
dieselben  これらは
die Dinge und ihre Bestimmungen (物とその規定)

※3
植物の成長についての私たちの知識でたとえるなら、「an und für sich」は種子の状態で
「für sich」は発芽の状態ともいうべきか。それらは私たちの意識の外に独立してある。

「an und für sich」をどう訳すべきか - 夕暮れのフクロウ https://is.gd/tPnAPg

※4
私たちの意識なくして知識はありえない。

※5
いずれも同意語だけれど、それぞれニュアンスの違いがあるようだ。おおよそ次のように理解している。
Aktion(動作、活動、働き、action)、Handlung(そぶり、所作)、Operation(軍事的、学問的、技術的な活動、行動)、Tat(意図的な行為、行動)、Verhalten(ふるまい、態度)

※6
原子を分割して核エネルギーを引き出した人間は、青い桜の花を作り出すこともできるかもしれない。

※7
この「精神の現象論」におけるヘーゲルの立場は、「実在論」でもなければ「観念論」でもない。仏教用語で、物そのものを「色」、私たちの意識を「心」と呼ぶなら、私たちの知識においては、この物と意識の両者は切り離すことのできない関係にあるから「色心不二」の立場ということもできる。

ヘーゲルが「観念論(Idealismus)」をどのような意味で使っているかを確認しておく必要がある。

§278c[至高性(主権)をつくる観念論、Der Idealismus, die Souveränität ausmacht] - 夕暮れのフクロウ https://is.gd/ovLOgU

 

 

 

 


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