夕暮れのフクロウ

―――すべての理論は灰色で、生命は緑なす樹。ヘーゲル概念論の研究のために―――(赤尾秀一の研究ブログ)

ヘーゲル『哲学入門』第一章 法 第四節 [法における自由と人格]

2020年04月25日 | ヘーゲル『哲学入門』
ヘーゲル『哲学入門』第一章 法 第四節 [法における自由と人格]
 
§4
 
Insofern Jeder als ein freies Wesen anerkannt wird, ist er eine Person.
 Der Satz des Rechts lässt sich daher auch so ausdrücken: es soll Jeder von dem Andern als Person behandelt werden. 
 
Erläuterung.
 Der Begriff der Persönlichkeit schließt in sich die Ichheit oder Einzelheit, welche ein Freies oder Allgemeines ist. Die Menschen haben durch ihre geistige Natur Persönlichkeit.(※1)
 
§4[法における自由と人格]

各人は自由な存在として認められているかぎりにおいて、各人は一個の人格 である。それゆえに、法の命題は次のように表現することができる。すなわち、「すべての人は他者から人格として取り扱われなければならない。」

説明
人格性という概念は、自らのうちに自我性もしくは個別性の概念を含んでいる。それらはいずれも、自由なものであり、また普遍的なものである。人間はその精神的な本性によって人格性をもつ。

 
※1

先立ってヘーゲルは自意識を分析してその本質が自由にあることを明らかにしたが、この自由は人格という概念の前提でもある。自由と人格性(Persönlichkeit)の概念は人間の精神の本性の両面である。自由なくしては人格も存在しない。

すべての「私=自我」は個別的なものであるとともに普遍的なものであることがここでまた明らかにせられるが、これを根拠として「法 Recht」の定式化が導き出される。「すべての人は他者から人格として取り扱われなければならない。」

すなわち、「法 Recht」 の目的は、各人の自由と他者の自由との両立にある。

この一節は、カントの有名な命題、「なんじの意志の格律がつねに同時に普遍的立法の原理として妥当するように行為せよ( Handle so, daß die Maxime deines Willens jederzeit zugleich als Prinzip einer allgemeinen Gesetzgebung gelten könne. )」という 定言命法ふまえて述べられている。カントの弟子としてヘーゲルの面目躍如たる一節である。

 

 

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