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放射状雲と強風
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放射状雲とは帯状の雲が平行にのびている時、
みかけ上観測者から透視効果で
一点からまるで放射するように見える雲のことです。
美術で言えばパース技法でいう「一点透視法(1つの消失点に向かって収束する線で表現する技法)」のような感じでみえます。
放射状雲のダイナミックさと強風との関係をご紹介します。
(勉強を続けて今後書きなおすことがあると思います。よろしくお願い致します。)
ジェット気流による放射状巻層雲
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〜放射状雲になりやすい雲〜
雲形としては、巻雲、巻層雲、巻積雲、高積雲、たまに高層雲
層積雲、たまに積雲(おろし風やダシが吹く地域では積雲が整列しやすいため、放射状にみえることがあります)
このように、かなり幅広くあります。
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〜放射状雲になりやすい気象条件〜
放射状の雲になるときは上空で風が強い時が多いです。
☆特にジェット気流が強い時に発生するトランスバースラインやシーラスストリーク
などが地上で放射状にみえることが多いです。
☆前線を伴った低気圧全体の雲の東側や南東側にしばしば現れるトランスバースバンド(巻雲や巻層雲といった上層雲でできている)
などが地上で巻雲の放射状雲やスッとまっすぐにのびた巻雲として見えることが多いです。
トランスバースライン:衛星雲画像の用語で風の流れの方向に直角に波状に並ぶ巻雲の細長い雲列のこと。主にジェット気流由来。
(乱気流が発生しやすい)
トランスバースバンド:衛星雲画像の用語で風の流れの方向に直角に波状に並ぶ巻雲の雲列のこと。
(上層の気圧の峰の下流部分でよく発生。その他は下記出典参照)
シーラスストリーク:衛星雲画像の用語で、筋状に細長くのびる巻雲のこと
「気象衛星画像の解析と利用」から一部PDF(H12年)
衛星画像で観測される雲パターンと水蒸気パターン(第二章)PDF
↑トランスバースバンドのことや上層のジェット気流に伴う雲のことなど大変詳しく書いてあります。
☆低気圧前面の上空のジェット気流が主な原因でできた薄い地形性巻雲が地上で巻雲の放射状雲(巻積雲の放射状雲の時もあります)
に見えることがあります。
この後、低気圧からの湿った空気が上空に流れ込んでくるので
(前線面が傾いているので上層から雲が増えるのと上空を流れるジェット気流の構造もあります)、
飛行機雲も発生しやすくなります。
この飛行機雲が巻雲となって放射状巻雲になることが多いです。
関東南部 2015.11/1 7:50ころ
関東南部に発生した地形性巻雲を地上から見た時に濃密な巻雲が並んだ放射状巻雲になっている雲。
ほぼ同じ時間の衛星雲画像です↓動画で見るとよくわかると思います。tenki.jp過去の気象衛星より
気象庁衛星雲画像(可視と赤外)少し落書きをして見づらくなっています。
地形性巻雲がトランスバースラインのようになっています。
こういう時に濃密な巻雲が並んで放射状に見えやすくなります。
地形性巻雲のほかに下層風が収束して下層雲ができている風下側でも強風による巻雲がみられます。
地形性巻雲:山脈の風下側に発生する停滞性の巻雲のこと(「気象衛星画像の解析と利用」から抜粋)
「気象衛星画像の解析と利用」から一部PDF(H12年)
衛星画像で観測される雲パターンと水蒸気パターン(第二章)PDF
↑トランスバースバンドのことや上層のジェット気流に伴う雲のことなど大変詳しく書いてあります。
その他には、
☆観測地から北側に前線を伴った低気圧がある時に、低気圧に吹き込む風が影響してできるものもあります。
主に高積雲(ひつじ雲)の放射状雲や巻積雲(うろこ雲やさば雲)の放射状雲になる事が多いです。(レンズ雲になるときもあります)
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〜放射状雲発生時の写真と天気図〜
2014.5/17 9:15JST
巻雲の放射状雲。南側は巻層雲のようです。
10:30JST
雲が南側に後退しました。
まずは地上天気図。
2014.5/17 9:00JST気象庁発表の地上実況天気図↓
発達した低気圧が北東へ進み、関東では東に抜けた後の晴天域です。
東京では巻雲(かぎ状の記号)と積雲(半丸の記号)が出ていたようです。
写真は巻雲なのでだいたい7000mから10000mくらいに発生する上層雲の分類になります。
ということで、ジェット気流高度の天気図で確認します。
気象庁発表 5/17 9:00JST 200hPa実況図から一部抜粋↓
低気圧通過後はジェット気流の南下が観測されることがあります。
この日もけっこう下がってますね。
そして衛星赤外雲画像で巻雲の様子をみてみます。
2014.5/17 9:00JST tenki.jpより
雲がほとんど無いように見えますが、ジェット気流に沿って巻雲が発生しています。
特に紀伊半島の紀伊山地付近からと奥羽山脈からの地形性巻雲がわかります。
地形性巻雲が出る時はジェット気流が強い時や強風時が多いです。
関東南部もうっすら見えます。
地形性巻雲:山脈の風下側に発生する停滞性の巻雲のこと(「気象衛星画像の解析と利用」から抜粋)
そこで拡大して時系列で見てみます。(衛星雲赤外画像:tenki.jpより)
紀伊半島からの地形性巻雲が東に移動する過程でトランスバースラインのような上層雲の波状雲に変わりました。
東北地方の地形性巻雲はそのままです。
トランスバースラインはジェット気流周辺部の風速の差や鉛直方向の安定度が低い層内で起こる不安定波(ケルビンヘルムホルツ波)
が可視化されたものと言われています。
ここで風速差があるか鉛直断面図(高層断面図)をみてみます。
気象庁発表2014.5/17 9:00JST鉛直断面図から抜粋↓
館野上空に120ノット(約60m/s)の核を持つジェット気流があります。
その下層に風速のシアー(鉛直方向の風速差)が若干確認されます。
転移層も若干あり、その南側の上空が湿っておりジェット気流の構造から暖湿気の上昇域にあたるので
雲の発生につながった可能性があります。
以上から、この日の放射状巻雲はジェット気流周辺の強風でできた地形性巻雲から派生したトランスバースラインによるものと思われます。
トランスバースライン:衛星雲画像の用語で風の流れの方向に直角に波状に並ぶ巻雲の細長い雲列のこと。主にジェット気流由来。
乱気流が発生しやすい場所となっています。
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2014.5/28 19:00JST
少し夕日に染まっている放射状巻雲。幻想的です。
2014.5/28 18:00の気象庁発表の速報地上天気図↓
日本海の南西付近に低気圧がありますが、前線を伴った低気圧がぬけたことで
日本付近は高気圧内になってます。
7000mから10000mくらいに出る巻雲なので、ジェット気流高度の200hPaをみてみる。
2014.5/28 21:00 気象庁発表200hPa実況天気図↓
西日本の南海上に上層の気圧の谷がある。
関東は南西寄りのジェット気流が沿岸部にかかっている。
そして衛星雲画像の可視画像をみてみる。
2014.5/28 19:00 (tenki.jpより)
はっきりとジェット気流に沿ったトランスバースラインが何本か見える。
トランスバースラインはジェット気流の南側に発生することが多いです。
主に鉛直方向の風シアー(ここでは風速差が主)が原因とされています。
雲の大きな塊の北側縁辺部と南側縁辺部の流れに直角方向に縦に並んでる細いすじ状の雲(上層雲)が
トランスバースラインです。
トランスバースライン:衛星雲画像の用語で風の流れの方向に直角に波状に並ぶ巻雲の細長い雲列のこと。主にジェット気流由来。
乱気流が発生しやすいです。
拡大したものを見てみる。
関東付近ははっきりとしたトランスバースラインの中に入っています。
この日出た巻雲はトランスバースラインの雲と思われます。
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今回は巻雲の放射状雲だけでしたが、
今後、高積雲の放射状雲が観測できれば載せたいと思います。
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