新型コロナウイルスの影響で史上初めて1年延期された東京五輪の開幕から23日で、1年を迎えた。多くの会場が無観客となる異例の祭典で世論の逆風も吹いた大会。ボクシング女子フェザー級(体重57キロ以下)で日本女子史上初の金メダルに輝いた入江聖奈(21)=日体大=が、22日までにサンケイスポーツのインタビューに応じ、1年前を振り返った。東京五輪で得た教訓を原動力に第2のステージに進む。(取材構成・武田千怜、角かずみ)
日本女子ボクシング界初の金メダリストとなり、大好きなカエルのように〝大ジャンプ〟した東京五輪から1年。快挙とともに明るいキャラクターで一躍人気者になった入江が、興奮冷めやらぬ様子で思い出の夏を振り返った。
「私の中で東京オリンピック以上の出来事は二度とないだろうなと思います。オンリーワンの大会。記憶がなくなるくらい興奮したのは初めてでした」
コロナ禍の東京五輪。無観客の両国国技館で感じたのは寂しさではなかったという。「会場ではボランティアの方の優しさに触れ、SNSではメッセージをたくさんいただいた。国民の方の支えがあってこその東京五輪だった。開催してもらえてよかったな」。人の温かさに触れ、感謝する大会になった。
1年前の今頃は人生を懸けてボクシングに打ち込んでいたが、現在は次なる目標に向けて猛勉強中だ。日体大の4年生は「金メダルで満足した。技術的な伸びしろはまだあると思うけど、心のポテンシャルがここまでだった。満足した時点で引き際はここかなと」と東京五輪で完全燃焼。来春の大学卒業を機に現役を引退する意向で、大好きなカエルの生態について研究するため、理系の大学院進学を目指す。最後の大会となる見込みの全日本選手権(11月)に向けた練習と両立して1日4時間、英語や専門科目の勉強に励んでいる。
夢に見てきた東京五輪の金メダル。頂点にたどり着いたからこそ見えた景色があった。目標を達成し、ボクシング人生を振り返ったときに浮かんだのは、切磋琢磨(せっさたくま)してきたライバルの顔。好敵手との対戦で技術が磨かれ、強くなれた。
「みんなの努力があってこそ、成果につながった。(他の)誰かの努力がないと、誰かの成功は絶対にない」