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【新薬】アバルグルコシダーゼ アルファ(ネクスビアザイム)
ポンペ病に対する新たな治療薬が登場

2021/11/26
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2021年11月25日、ポンペ病治療薬のアバルグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え) (商品名ネクスビアザイム点滴静注用100mg)が薬価収載された。本薬は、9月27日に製造販売が承認されていた。用法用量は「遅発型の患者には1回20mg/kg、乳児型の患者には1回40mg/kgをそれぞれ隔週点滴静注」となっている。

 ポンペ病は、ライソゾーム酵素の1つである酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の先天的な遺伝子異常によりGAA活性の低下または欠損が原因で生じる疾患で、ライソゾーム内の複合多糖(グリコーゲン)が全身の筋肉内に蓄積する常染色体劣性遺伝形式の代謝性筋疾患である。グリコーゲンの蓄積は、不可逆的な筋損傷を引き起こし、肺を支える横隔膜などの呼吸筋、運動機能に必要な骨格筋に影響を及ぼす。

 ポンペ病は、発症年齢から乳児型と遅発型(小児型または成人型)に分類され、罹患患者の大多数は遅発型である。また、重症度が高い生後数カ月以内に発症する乳児型は、重度の心筋症および呼吸不全を呈し無治療の場合は生後1年以内に死に至り、遅発型では発症年齢が幅広く乳児型に比べ多様な経過をたどる。

 現在、ポンペ病の治療法としては欠損したGAAを補充する酵素補充療法が行われており、2007年6月からヒトGAAのアルグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)(マイオザイム)が日本を含めた世界各国で臨床使用されている。この酵素補充療法により、ポンペ病治療は飛躍的に進歩し、患者のQOL向上などに寄与してきた。しかし、一方でポンペ病患者における進行性の筋機能および呼吸機能低下は、細胞内への取り込みが不十分なアルグルコシダーゼ アルファでは完全に抑制できないことも課題となっていた。

 ネクスビアザイムは、既存のアルグルコシダーゼ アルファを糖鎖改変し、細胞内への取り込みを高めたGAAの遺伝子組換え製剤である。具体的には、マンノース-6-リン酸(M6P)受容体を介した横隔膜および他の骨格筋への取り込み増大を目的として、アルグルコシダーゼ アルファの酸化シアル酸残基にM6Pを結合させたもので、細胞内に取り込まれてライソゾーム内グリコーゲンのα-1,4およびα-1,6-グリコシド結合を加水分解することで、グリコーゲンを分解して組織損傷を改善する。

 未治療の遅発型ポンペ病患者を対象とした国際共同試験(対照:アルグルコシダーゼ アルファ)およびアルグルコシダーゼ アルファから切り替えた乳児型ポンペ病患者を対象とした国際共同試験において、本薬の有効性と安全性が確認された。海外においては、2021年8月現在、米国で承認されており、日本では、2020年11月に希少疾病用医薬品に指定されている。

 副作用は、頭痛、浮動性めまい、咳嗽、呼吸困難、悪心、下痢、そう痒症、発疹、蕁麻疹、紅斑、筋痙縮、筋肉痛、疲労、悪寒、腹部不快感、疼痛(各2%以上)などであり、重大なものはInfusion reaction(30.4%)、アナフィラキシー(1.4%)が報告されているので十分注意する必要がある。

 薬剤使用に際しては下記の事項について留意しておかなければならない。

●注射用水で溶解し、5%ブドウ糖注射液で希釈した後に、初回点滴速度1mg/kg/時で開始すること

●Infusion reactionの発現がない場合は、添付文書上の「用法及び用量に関する注意」における点滴速度および総点滴時間、総点滴量を参照し、30分ごとに点滴速度を上げること

●重度の過敏症またはアナフィラキシーが起こる可能性があるので、患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には速やかに投与を中止して適切な処置を行うこと(添付文書上の「警告」及び「重要な基本的注意」を参照)

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