NY市、エンタメ再開へ ワクチンが観光復活の切り札に
【ニューヨーク=山内菜穂子】米東部ニューヨーク市で6月、夏の観光シーズンに向けて音楽や芝居などの興行が本格的に再開する。人を呼び込む切り札となっているのは新型コロナウイルスのワクチン接種だ。アリーナや劇場では観客に接種証明を求める動きも相次いでいる。
大型アリーナ、マディソン・スクエア・ガーデンは20日にロックバンド「フー・ファイターズ」のコンサートを開くと発表した。16歳以上のすべての観客に接種証明の提示を求め、収容人数の制限なしで開催する。
フー・ファイターズは8日、自身のインスタグラムで「この日を一年以上待ち望んでいた。ニューヨーク、大声でともに叫ぶ長い夜に備えよう」と呼びかけた。
ブロードウェーでも26日から、ロック歌手、ブルース・スプリングスティーン氏のショーが始まる。観客は接種証明書を提示する必要がある。同市は9月からのブロードウェー再開を目指してきたが、接種が進むにつれて再開を早める動きが出ている。
スポーツ観戦でも接種済みの人向けの座席を増やしている。11日からは大リーグ、メッツの本拠地試合で座席の9割を接種者に割り当てる予定だ。
人を呼び込む切り札となっているのがワクチン接種だ。ニューヨーク州では8日、18歳以上人口のうち約67%が少なくとも1回目の接種を終えた。7日の感染者数(7日移動平均)は約570人。州は接種率が7割に達すれば、ほとんどの制限を撤廃する。
世界有数の観光都市である同市には19年、過去最高となる6600万人の観光客が訪れた。20年春はコロナ感染の世界的な中心地になったため、劇場など多くの施設が閉鎖に追い込まれた。20年の観光客数は2290万人に落ち込んだ。
このため21年は観光産業の復活に期待が高まる。デブラシオ市長は「観光客を受け入れる準備ができた」と語り、総額3000万ドル(約32億円)の観光促進キャンペーンを始めた。
5月からは観光客にもワクチンを提供し始めた。市内の観光名所に仮設の接種会場を設け、1回の接種で完了する米ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンを提供する。パスポートなど年齢を確認できるものが必要だが、予約は不要だ。アメリカ自然史博物館などの文化施設にも接種会場を設けている。
観光シーズンの到来を前に課題となっているのが治安だ。同市警によると5月、強盗の発生件数は前年同月比で46%増、窃盗は35%増となった。観光名所タイムズスクエアでは5月、男が発砲し、近くにいた観光客3人が負傷する事件も発生した。
雇用環境の悪化が治安の悪化につながっている。市の失業率は改善傾向にあるものの4月で11.4%(季節調整済み)と、コロナ禍の前の19年4月(4%)に比べて依然として高い。マンハッタンではホームレスの姿が目立つ。11月の同市長選に向けた22日の予備選では、治安やホームレス対策や大きな争点となっている。
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