夕暮れのフクロウ

―――すべての理論は灰色で、生命は緑なす樹。ヘーゲル概念論の研究のために―――(赤尾秀一の研究ブログ)

ヘーゲル『哲学入門』第一章 法 第九節[意志と物]

2020年06月09日 | ヘーゲル『哲学入門』

§9

Die erst in Besitz zu nehmende Sache muss 1) res nullius (※1)sein, d. h. nicht schon unter einen andern Willen subsumiert sein.

Erläuterung.

Eine Sache, die schon eines Andern ist, darf ich nicht in Besitz nehmen, nicht, weil sie Sache, sondern weil sie  seine Sache  ist. Denn nehme ich die Sache in Besitz, so hebe ich an ihr das Prädikat, die seinige zu sein, auf und negiere damit seinen Willen. Der Wille ist etwas Absolutes, das ich nicht zu etwas Negativem machen kann. (※2)

第九節[意志と物]

所有において初めて取得される物は、1) 無主物(res nullius)  でなければならない。すなわち、すでに他人の意志のもとに属している物であってはならない。

説明

すでに他人のものである物を、私が取得して所有することは許されない。というのは、それが物であるからというのではなく、そうではなく 他人の物 だからである。つまり、私が物を取得して所有するということは、他人のもの という述語をその物から取り上げることであり、それによって、他人の意志を否定するからである。意志は、私の否定することのできない絶対的なものである。


(※1)
res nullius ラテン語、法律用語
無主物。放棄されたもの

(※2)
諸論の第一節でこの論考の対象が「人間の意志」であることが述べられているが、この人間の意志の概念は「法理論」へと進展して、その端初である所有(占有)の段階に入る。





コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ヘーゲル『哲学入門』第一章... | トップ |  ヘーゲル『哲学入門』第一章... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ヘーゲル『哲学入門』」カテゴリの最新記事