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「第4波」見えぬ収束 京都の重症病棟、緊迫の治療 

宇治徳洲会病院の重症患者が治療を受ける「レッドゾーン」=13日午後、京都府宇治市(渡辺恭晃撮影)
宇治徳洲会病院の重症患者が治療を受ける「レッドゾーン」=13日午後、京都府宇治市(渡辺恭晃撮影)
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 新型コロナウイルスの感染「第4波」で、医療体制への負荷が深刻だ。変異株が猛威を振るう大阪、京都、兵庫の3府県の病床使用率は6~8割。3度目の緊急事態宣言が発令され、3府県の新規感染者数は減少の兆しも見えつつあるが、病床使用率は依然高く、逼迫(ひっぱく)状態が続いている。京都市内の高度重症者の治療現場では緊迫感が漂う中、懸命の治療が続いていた。(秋山紀浩)

 13日午後、宇治徳洲会病院(京都府宇治市)にある専用病棟。人工呼吸器や点滴のチューブに囲まれた患者がベッドに横たわっていた。医師や看護師らが7人がかりで70代の男性患者の体をうつぶせにする体位変換も、看護師の1人が人工呼吸器のチューブを支えながらの慎重な作業だ。

 新型コロナでは肺の背中側に炎症が広がることが多く、患者をうつぶせ状態にする治療法が有効とされる。この病院では1日16時間はうつぶせに、8時間はあおむけにする。男性の体重は約60キロだが、薬で眠っているため全体重がのしかかる重労働だという。

 別のベッドでは看護師らが、肺炎防止のため、吸引器で患者の口内からたんを吸い出していた。こちらも、患者と至近距離での感染リスクを伴う作業だ。医師の一人は「細心の注意を払っている」と語る。

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 昨年4月から、計約120人のコロナ患者を受け入れてきた同病院。全473床のうち20床をコロナ専用とし、うち高度重症病床は府全体の約3分の1にあたる12床だ。感染疑い患者も診察するため、日常の診療にも影響が出ている。

 医師も各科から集めた特別態勢だ。統括する6人の下に計12人が3人1組でチームをつくり、1週間交代で治療。看護師を含めたスタッフは約60人にのぼる。この日の入院患者5人のうち、3人が人工呼吸器を使う重症患者。1人は回復して人工呼吸器を外したばかりの重症患者、1人は中等症患者だった。重症患者の平均入院日数は2週間前後という。

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 チームを統括する松岡俊三副院長(46)は「大型連休中よりも落ち着いているが、油断はできない」と話す。感染が急拡大した連休中は休診している病院が多かったため次々と患者が搬送され、高度重症病床は9床まで埋まった。「これ以上増えれば大阪のような状態に突入するのではと、危機感が高まった」。

 入院後すぐ、人工心肺装置「ECMO(エクモ)」が必要になる患者も増加。患者1人につき医師ら5~6人が3~4時間つきっきりになるため、「第3波以上に対応に迫られた」と篠塚淳医師(43)は話す。

 背景として指摘されるのが、感染力が強いとされる変異株の存在だ。4月以降、同病院でも30代患者2人が使用したといい、「若い人が急速に重症化するケースも増えている」(篠塚医師)。

 全国で高齢者へのワクチン接種が本格的に始まったが、医療体制は予断を許さない状況が続く。松岡副院長は「入院患者の割り振りや検査の効率化など、関係機関がもっと積極的に関与すべきだ」と指摘した。

重傷者最多1235人 各地で危機的状況  

 「第4波」に伴う病床逼迫は各地で深刻化している。厚生労働省は18日、人工呼吸器や集中治療室などで治療を受ける重症者が、過去最多の1235人になったと発表。逼迫に伴い、入院先が決まらないまま死亡するケースも出ている。

 関西では、変異株の影響で感染が急拡大。4月中旬~5月上旬に1日の新規感染者数が千人超となった大阪府では、独自指標で入院中の重症者数が重症病床を上回る事態に陥った。

 府内では、昨年10月以降に高齢者施設などで感染した後、入院できずに死亡した37人のうち、3月以降が約7割を占めた。重症病床使用率は5月5日にピークの82%を記録。17日は65%だが、依然として高止まりが続いている。

 兵庫、奈良の両県は、病床、重症病床いずれの使用率も70%台。京都府は重症病床は50%を下回っているものの、5日時点より逼迫している状況だ。

 一方、8日に第4波では最多の新規感染者1121人を確認した東京都では、いずれの使用率も上昇傾向。16日に緊急事態宣言地域に追加された北海道も、17日時点で重症病床は21%だが、病床使用率は52%となっている。

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