わずか7台の奇跡「幸運のタクシー」どうしたら乗れる?出会うこつを日本交通に直撃

2021年8月5日 11時51分

ピンク色のあんどんを付けた「幸運のタクシー」。ナンバーは乗ってみてのお楽しみと隠すドライバーの川崎直人さん

 8月5日はタクシーの日。見ると幸せになれるものといえば黄色い新幹線の「ドクターイエロー」が知られているが、タクシー業界にも神出鬼没の「幸運のタクシー」が存在した。「詳細は明かしていない」としぶる運行会社に食い下がり、出会うこつを聞いた。

◆確率はホールインワン級

 「こんな幸せな仕掛けがあるなんて」「良いことが起きそう」。SNSには興奮気味の乗車体験がつづられ、お笑い芸人やタレントら著名人の書き込みも目立つ。添えられた写真を見ると、あんどんと呼ばれる表示灯がどれもピンク色。これが「幸運のタクシー」の目印だ。
 幸運のタクシーは業界大手の日本交通(千代田区)が、23区と三鷹、武蔵野両市で7台だけ走らせている。このエリアを行き交う各社のタクシーの総数は実に約4万台。となると、街頭で「へい、タクシー」と手を上げて簡単には拾えないだろう。走行ルートや車両ナンバー、所属する営業所もヒミツ。7月に5台から7台に増え、出合う確率がちょっぴり上がったが、広報担当の野村貴史さんは「確率はゴルフのホールインワンと同じくらい」と説明する。

◆運良く乗れたら「記念乗車証」

 日本交通のあんどんは「桜にN」のマーク。桜の色はおなじみのブルーのほか、ベテランが乗務するゴールドがある。そこにピンクが加わったのが2012年。利用客に楽しんでもらおうと4台から始めた。

日本交通のあんどん

 運良く乗れた人をさらにハッピーな気分にさせる仕掛けがある。名刺くらいの大きさの記念乗車証がもらえるのだ。金色の文字があしらわれた高級感あるデザインは「ずっと大切に持っていてもらえるように」という若手社員の発案。昨年冬にはコレクター心をくすぐる期間限定のクリスマス仕様も登場した。

クリスマス限定仕様の記念乗車証(右2枚裏表)と通常デザイン(左)

◆ピンクドライバーあるある

 運転手はゴールドあんどんの資格者から選ばれる。ピンク歴2年の川崎直人さん(50)は「ピンクあんどんが浸透していないせいか、配車先に行くと『私が呼んだのは日本交通のタクシーよ』と勘違いされる。ピンクドライバーあるあるです」と明かす。
 川崎さんは当初、記念乗車証を降車時に渡していたが、客に「それならもっと浸りたかった」と言われ、乗車後すぐに渡すようにあらためた。「お客さま実は…」と切り出して乗車証を手渡し、客が見入っている間にサンルーフをさりげなく開ける。頭上に実物が現れたところで「お客さん、持っていますね」と決めぜりふ。心憎い演出だ。

サンルーフ仕様となっているため車内からもピンク色のあんどんは楽しめる。手前は記念乗車証

 午前2時に渋谷から乗ったカップルは「記念にドライブしよう」と喜び、近場までの予定を変えて工場夜景を見に川崎へ。不動産を買うか迷っているという客は降車時に「判を押すことにした」と言い残した。結婚式場に向かう新郎新婦を乗せたこともあった。

◆都心3区が狙い目!?

 そんなエピソードを聞かされると乗ってみたくなるが、「出合うこつはお答えのしようがない」と広報の野村さんのガードは堅い。そもそも、配車は近くにいるタクシーが向かう仕組みになっており、ピンクあんどんを指名して呼ぶことはシステム上できないそうだ。同社の会長も乗ったことがないらしい。
 配車で指名できないとなると、街中で4万台の中から探し出すしかない。ヒントを求めて食い下がると、野村さんは「日本交通の専用乗り場が多い都心3区(千代田、中央、港)のかいわいは出合える確率が高いかも」としぶしぶ教えてくれた。そして最後に、にやりと笑って付け加えた。「配車時に日本交通をご指名いただければ確率は上がります」
<8月5日はタクシーの日>
幸運のタクシーに似た例では名古屋の「金色タクシー」や京都の「四つ葉のクローバー号」がある。
 文・加藤健太/写真・戸田泰雅
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