ガレージロック
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/12 20:57 UTC 版)
ガレージロック | |
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現地名 | Garage rock |
様式的起源 |
ロックンロール ロカビリー ビート R&B ブルースロック ブルース サーフロック インストゥルメンタル・ロック |
文化的起源 | 1960年代アメリカ合衆国 |
使用楽器 |
エレクトリック・ギター ベース ドラムス 鍵盤楽器 タンバリン ハーモニカ |
派生ジャンル |
パンク・ロック ガレージロック・リバイバル パワー・ポップ グラムロック インディー・ロック サイケデリック・ロック プロト・パンク カウ・パンク クラウトロック パンク・ブルース サイコビリー |
サブジャンル | |
フリーク・ビート フラットロック | |
融合ジャンル | |
ガレージ・パンク アート・パンク | |
地域的なスタイル | |
シカゴ デトロイト ニューヨーク LA シアトル ミネアポリス テキサス州 |
概要
ガレージロックとは、ガレージ(車庫)で練習するアマチュアバンドが多かったことに由来する名称である[1]。1960年代のアメリカ合衆国を発祥としている。ザ・シーズ、シャドウズ・オブ・ナイト、スタンデルズ、カウント・ファイブ、シンジケート・オブ・サウンド、ディック・デイル、キングスメンなどが代表的ミュージシャンとして知られている。
1964年以降のビートルズやローリング・ストーンズ、ザ・フー、キンクスなどのイギリス出身バンドによる「ブリティッシュ・インヴェイジョン」の強い影響も受け[2]、初期のロックンロールへの回帰の要素が強い草の根的ムーヴメントとして発展した。
レニー・ケイが編集したアルバム『ナゲッツ:オリジナル・アーティファクツ・フロム・ザ・ファースト・サイケデリック・エラ、1965-1968』に収録されたバンド群が、特によく知られている。同アルバムには1965年から1968年のガレージ・バンドが多数収録され、1972年に発表された。レニー・ケイは数年後に、パンクのパティ・スミス・グループに参加した。
60年代ガレージロックの範疇に括られるバンドは多い。彼らのサウンドは、ロックンロールのスタイルに則ったシンプルなコード進行の曲が多く、ロックの初期衝動がストレートに現れている。一方で忘れてはならないのが、60年代当時流行し始めたLSDなどの幻覚剤が音楽にもたらした効果である。ドラッグによるトリップ効果を表現しようという意図は、幻想的な曲作りや、ファズを多用した歪んだギターや、シタールなどのインド民族楽器の使用に繋がる。そのため、サイケデリック・ロックの萌芽を感じさせるバンドも存在した。
ロンドン・パンクが、1970年代後半に流行した[3]。産業ロックなどの商業主義的に肥大化したロックに反抗した当時のパンク・ムーヴメントの中で、ロックの初期衝動に忠実ともいえる性急さを特徴とした60年代以前のガレージ・ロックの再評価がなされた。
1980年代以降のバンドは、やはりロックの初期衝動をストレートに表現している。尊敬するバンド、影響を受けたバンドとして60年代のガレージ・ロックやロックンロール・バンドを挙げるバンドが多い。しかし、新しい世代のバンドは、サイケ衝動とは縁遠く、若者の等身大の日常や世界観を持ったバンドが多いことが特徴である。
このジャンルには、オルタナティヴ・ロックのバンドも多くなった。リフ主体のギターサウンドが共通点である[注 1]。煌びやかな音響処理やSEを多用した80年代風の産業ロック的音作りや、スタジオでの多重録音による音像とは距離を置いた、シンプルな音を持ったバンドが多い。それが録音環境の良くないインディー・ロック、アンダーグラウンドのバンドとなり、オルタナティヴ・ロック/ポストパンクの色彩を強めている。
詳細
ガレージロックのバンドの多くは、全米的にブレイクすることはなく、その存在は泡沫的なものであった。彼らは、アルバムよりもシングルを中心にリリースすることが多かった。それらのシングルの多くはプレス枚数も少ないため、希少価値のあるもので、手軽に入手するのは困難である。現代の聴き手は、コンピレーション・アルバム(オムニバス)を通じてガレージ・ロックに接することとなる。
ガレージロックは、70年代のロンドン・パンクシーンに大きな影響を与え、1980年に入りカレッジ・ラジオ/オルタナティヴ・ロック[4]が全盛を迎えた時期までは注目されていた。だが、産業ロックやLAメタルなどのヘヴィメタルがアメリカで売れるようになると忘れられた存在となる。やがてヘヴィメタル人気が下火となり、オルタナティヴ・ロックがブームになった。1990年代にシアトルで起こったグランジムーブメントの旗手ニルヴァーナもガレージロックの影響を受けていて、その後のオルタナティブロック・ムーブメントに対して影響を与えた。そして21世紀には、ヒップ・ホップ、R&Bが全盛を迎え、それらのジャンルの売り上げが増え、ロック自体の売り上げが下降していった。
2000年代以降のガレージ・ロックとしては、ザ・ストロークスやザ・ホワイト・ストライプス、ザ・リバティーンズのほか、ローリング・ストーンズの影響を受けたジェット[注 2]があげられる。彼らの台頭により、ガレージロックは再び日の目を見ることとなった。2000年以降におけるガレージロックの再評価は「ガレージロック・リバイバル」と呼ばれた。現実にはヒップ・ホップやR&Bの台頭でロック・シーンは縮小し、CDの売り上げも落ちていたが、ロック専門誌によって持ち上げられた側面があった。これらのバンドの活躍は、世界の音楽界の一部の現象だった。
注釈
出典
- ^ Shuker 2005, p. 140.
- ^ Garage Rock Music Genre Overview - オールミュージック. 2022年4月10日閲覧。
- ^ 書籍「パンク」シンコー・ミュージック
- ^ “Alternative Songs: Top Alternative Songs Chart”. Billboard. 2020年2月15日閲覧。
- ^ 「BRITISH BEAT」 p・79
- ^ “The Sonics – Here Are The Sonics”. mxdwn.com. 2022年4月9日閲覧。
- ^ “Garage-Rock Godfathers The Sonics Get Feral at the Fillmore”. SF Weekly. 2022年4月9日閲覧。
- ^ Markesich 2012, pp. 10–12; Shaw 1998, pp. 18–19.
- ^ Bangs 1981, pp. 261–264; Blecha 2009, pp. 119, 135–138.
- ^ Blecha 2009, pp. 133–138, 151–155.
- ^ Shaw 1998, pp. 18–19.
- ^ Sabin 1999, p. 159.
- ^ Austen 2005, p. 19.
- ^ Markesich 2012, p. 10.
- ^ Waksman 2009, p. 116.
- ^ “The Amboy Dukes Songs, Albums, Reviews, Bio & More”. AllMusic. 2021年10月24日閲覧。
- ^ “The Barbarians Songs, Albums, Reviews, Bio & More”. AllMusic. 2021年10月24日閲覧。
- ^ “The Barbarians (ざ・ばーばりあんず)(ザ・バーバリアンズ)”. ListenJapan. 2007年11月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月10日閲覧。
- ^ “Blue Cheer Songs, Albums, Reviews, Bio & More”. AllMusic. 2021年10月24日閲覧。
- ^ “The Nazz Songs, Albums, Reviews, Bio & More”. AllMusic. 2021年10月24日閲覧。
- ^ Unterberger, Richie. “The Standells Biography, Songs, & Albums”. AllMusic. All Media Network. 2022年4月10日閲覧。
- ^ “The Syndicate of Sound Songs, Albums, Reviews, Bio & More”. AllMusic. 2021年10月24日閲覧。
- ^ “The Syndicate of Sound (ざ・しんじけーと・おぶ・さうんど)(ザ・シンジケート・オブ・サウンド)”. ListenJapan. 2007年11月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月10日閲覧。
- ^ “The Velvet Underground (べるべっと・あんだーぐらうんど)(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド)”. ListenJapan. 2006年1月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月10日閲覧。
- 1 ガレージロックとは
- 2 ガレージロックの概要
- 3 2000年代以降
- 4 脚注
- 5 外部リンク
- ガレージロックのページへのリンク