若い女性に多い膠原病「全身性エリテマトーデス」とは?症状・治療法

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全身性エリテマトーデス発疹が出た関節痛関節腎臓

全身性エリテマトーデスは、本来、自分の体を守るために働く免疫の“誤作動”により、全身のさまざまな臓器に炎症が起こる膠(こう)原病の一つです。「全身性」という名のとおり、全身のさまざまな部位に症状が現れます。長期にわたる治療が必要で、国の指定難病*の一つです。

*指定難病…原因がわからず、治療法が確立されていない難病のなかでも、一定の要件を満たす場合に医療費助成制度の対象となる病気。

全身性エリテマトーデスの主な症状

全身性エリテマトーデスの症状 関節炎

全身性エリテマトーデスの全身症状

  • 関節炎
    関節内で炎症が起こり、関節に痛みを伴います。初期症状のなかで、最も多くみられます。
  • 発熱
    38℃を超える発熱。
  • レイノー現象
    寒さや冷たいものに触れることなどによって、指先の血流が低下し、青白くなります。数分から10分間ほどで元に戻ります。
  • 蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)
    鼻から両頬にかけて、赤い斑点が蝶のような形に表れます。かゆみや痛みはありません。初期症状として、患者さんの約20%に現れます。
  • 全身症状
    だるさ、疲れやすい、体重の変動、光線過敏症、脱毛、口内炎、むくみ、筋肉の痛み、神経・精神症状、食欲不振

すべての症状が現れるわけではなく、人によって現れる症状やその程度は異なります。比較的軽症のケースもありますが、重症の場合は命に関わることもある病気です。

原因不明の病気

全身性エリテマトーデスは原因不明の病気

全身性エリテマトーデスが起こる詳しい原因はわかっていませんが、遺伝的な体質に加えて、「日光(紫外線)」「ウイルス感染」「細菌感染」「妊娠・出産」「薬」「手術」など、何らかの環境要因がきっかけとなって発症すると考えられています。

全身性エリテマトーデスの約9割が女性

20~40歳代で発症することが多いのですが、子どもから高齢者まで、どの年代でも発症することがあります。また、患者さんの約9割が女性というのも特徴です。日本では約6万人の患者さんがいます。
症状が長期間続いたり、屋外で長く紫外線を浴びたあとに症状がみられたりした場合は、かかりつけ医に相談してください。全身性エリテマトーデスの疑いがあれば、リウマチ・膠原病の専門医を紹介してもらいましょう。

全身性エリテマトーデスの診断

全身性エリテマトーデスの問診・視診・触診
全身性エリテマトーデスの診断 血液検査でわかること

全身性エリテマトーデスの診断では、問診、視診、触診が大切です。問診では、「気になる症状がいつから現れたのか」「日光に長時間当たったか」「家族に膠原病のある人がいるか」などを確認します。視診や触診では、皮膚や関節をはじめとして、全体の症状を調べます。

そのほか血液検査や尿検査が行われます。血液検査では、免疫の異常や血球数の変化があるかどうか、全身性エリテマトーデスと関わりの深い抗体の値、腎機能や肝機能など、臓器の状態などを調べます。尿検査では、尿たんぱくを調べて、腎臓の機能を確認します。また、脳や神経、肺などの状態を調べるために、MRIやCTなどの画像検査が行われることがあります。

全身性エリテマトーデスの治療法

全身性エリテマトーデス 寛解を維持することを目標
全身性エリテマトーデスの治療薬

現時点では、全身性エリテマトーデスそのものを完全に治すことは難しいため、病気が落ち着いて安定している状態(寛解[かんかい])を維持することが治療の目標となります。全身性エリテマトーデスは免疫の異常が原因なので、免疫の働きを抑える薬を使用します。
「ステロイド薬」が中心ですが、「ヒドロキシクロロキン」も有効な薬と考えられています。これに加えて「免疫抑制薬」「生物学的製剤」を追加します。

ステロイド薬

ステロイド薬の主な副作用

免疫反応や炎症を強力に抑える働きがあります。のみ薬が基本で、重症の場合は、入院して点滴で投与する「ステロイドパルス療法」が行われることもあります。

長期間使用するとさまざまな副作用が現れることがある。「正常な免疫低下による感染症」「満月のように顔が丸くなる“ムーンフェイス”」「肥満」「糖尿病」「脂質異常症」「高血圧」「骨粗しょう症」「不眠」「抑うつ」など。副作用を予防・軽減する薬も併せて使用することがあります。

ヒドロキシクロロキン

のみ薬。特に関節痛や皮膚症状に有効とされ、蝶形紅斑も抑えることができるので、患者さんの心理面にも大きな効果があります。
副作用・・・頻度は低いものの、網膜症**が起こることがある。長期間服用することが多いので、眼科での定期的な検査が必要です。
**眼球の内側にある薄い膜(網膜)に障害が起こり、資料の低下などの症状が現れます。

免疫抑制薬

免疫の働きを抑えることで症状を改善させる薬です。以前はステロイド薬で症状が抑えられない場合に使われていましたが、現在はより早期から積極的に使用されています。
副作用は骨髄抑制、感染症などです。免疫抑制薬のうち、シクロホスファミドとミコフェノール酸は、胎児に影響する可能性があります。妊娠を希望する場合は、事前に薬の調整について担当医に相談してください。

生物学的製剤

特定の免疫物質の働きを抑制することで、症状を改善します。ステロイド薬、ヒドロキシクロロキン、免疫抑制薬を行っても効果が現れない場合、生物学的製剤のベリムマブを使用します。
副作用はアナフィラキシー***などの過敏反応、感染症などです。
***急激に起こる全身性のアレルギー反応

自己判断で薬を減らしたり、中止したりしない

副作用がつらかったり、症状が改善しても、自己判断で薬の量を減らしたり、中止したりしないでください。特に、ステロイド薬を急にやめると、けん怠感や血圧低下、重症の場合はショック状態が起こる「ステロイド離脱症候群」が現れることがあります。医師の指示どおりに服用しましょう。

外出時には紫外線対策を

外出時には紫外線対策を

紫外線を浴びることによって皮膚症状が悪化するケースがあります。紫外線が強い日中は、できるだけ外出を控え、特に夏場は短時間の外出でも薄手の長袖の服を着用し、帽子、日傘、日焼け止めを使って紫外線を避けるとよいでしょう。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2020年12月 号に掲載されています。

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    免疫システムに異常!こう原病「全身性エリテマトーデス」