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原子力発電所の稼働「容認」約6割 電力需給逼迫で「電気の大切さ感じた」約9割

 産経新聞社は、エネルギー問題に関する意識調査を実施した。この中で、今冬の厳しい寒さによる電力需要の増大に伴い、電力各社が1月に利用者に対して、節電への協力を呼びかけたことに関連し、原子力発電所の稼働について聞いたところ、一定程度の稼働を容認する人が56.5%と約6割を占めた。国内の電力供給は、原子力発電所の再稼働が進まず、燃料を輸入に依存し、地球温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)を排出する火力発電が約8割を占める状態が続いている。調査では、電力の安定供給や地球温暖化防止の観点から原子力発電の必要性を認識している人が多数を占める実態が浮き彫りになった。

 1~2月にインターネット調査を実施し、全国の2192人から回答を得た。全国的に電力需給が逼迫(ひっぱく)した1月10日に電力各社が「節電へのご協力のお願い」を発表したことに関して、日本のエネルギー問題に対する考えを聞いた。 電力の安定供給のためには一定程度の原子力発電所の稼働はやむを得ないとの質問(図表1)に対し、「そう思う」が19.8%、「どちらかといえばそう思う」が36.7%で、両方を合わせた「容認」は56.5%となった。これに対し、「そう思わない」は20.6%、「どちらかといえばそう思わない」は15.7%で、容認しない人は合わせて36.3%となり、20.2ポイントの差があった。

安定供給に高い関心

 電気の大切さを感じたとの質問(図表2)には、「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」を合わせると88.5%と約9割を占めた。日本のエネルギー自給率が低いことは問題だとの質問(図表3)では87.9%、天候に左右される再生可能エネルギーだけに頼ることは難しいとの質問(図表4)では73.8%だった。

 調査では、日本のエネルギー事情に対する関心や認識についても聞いた(図表5)。「エネルギー問題は資源の乏しい日本にとって重要な課題だ」との問いに対し、「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」と答えた人は合わせて88.9%と約9割を占めた。「エネルギー問題は地球温暖化防止の上で重要な課題だ」、「電力の安定供給には多様な発電方式を組み合わせたエネルギーミックスが重要だ」、「日本は燃料を輸入に頼る火力発電の比率が高水準にあり、エネルギー安全保障の観点から問題だ」との問いでも、「そう思う」と「どちらかというとそう思う」の割合が約8割を占めた。電力の安定供給や地球温暖化防止について高い関心を持っていることがうかがえる。

原子力は現実的な選択肢

 原子力発電については、「安定して電力を供給できる電源だ」が、「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」を合わせて53.9%と過半数を占めたほか、「発電時にCO2を排出せず、地球温暖化防止に有効だ」も53.5%だった。

 日本の電源構成は、2018年度実績で火力発電の割合が約8割を占める一方で、原子力発電は約6%にとどまり、再生可能エネルギーも約17%となっている。エネルギー源をどこまで国内で賄えるかを示すエネルギー自給率は、約12%と、先進国で最低水準にあり、エネルギー安全保障は脆弱(ぜいじゃく)だ。燃料を長期使用でき、使用済み燃料を再利用できることから、「準国産エネルギー」として位置づけられている原子力発電の比率が大幅に低下したことが主因だ。

 政府は2030年度の電源構成で原子力発電を22~20%程度、再生可能エネルギーを22~24%程度とし、多様な電源を組み合わせるエネルギーミックスを目指している。

 今回の調査では、私たちの暮らしや経済活動に直結するエネルギー問題への関心は高く、日本のエネルギー事情も踏まえて、再稼働も含め原子力発電の必要性が広く認識されていることが分かった。国のエネルギー政策も、現実的な選択肢として、安全性が確認された原子力発電所の再稼働を進めていくことが求められる。

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