釜石の日々

重力変化が地震の前兆となる可能性

岩手県には東の北上山地と西の奥羽脊梁山地がある。北上山地は主に2000万年前の先新第三系と呼ばれる地質から成る。奥羽脊梁山地も同じく先新第三系の地質を基盤とするが、その上を1500万年前の地質や250万年前の火山噴出物が覆う。要するに極めて古い地質が重層している。ところで、地球は自転しており、そのため地表では遠心力が働いている。そして、地球の中心に向かう引力も働いている。この二つの力で重力が構成されている。この重力は定数(9.807)に質量をかけて求められる。質量は密度と体積をかけたものだ。体積が同じならば、密度が高いほど質量は多くなる。当然、その時の重力も大きくなる。米国航空宇宙局NASAは人工衛星を使って、地球上の重力を測定している。このNASAの重力測定値を使って、2年前にオーストラリアのカーティン大学Curtin University の研究者たちが重力世界地図を作製した。これによると、日本列島の太平洋側は重力が大きく、特に東日本は顕著だ。東北では内陸部まで重力が大きくなっている。4月9日出版の科学誌NatureのNature Geoscienceにフランスの研究者の「Migrating pattern of deformation prior to the Tohoku-Oki earthquake revealed by GRACE data」と言う論文が掲載された。重力を測定する人工衛星GRACEのデータを分析した結果、日本の東北地震の前に重力の異常な変化が起きていた。東北の北上山地や奥羽脊梁山地はかっては海底であった。太古の海の化石がたくさん発見される。東北の太平洋側の海底もやはり北上山地などと同じ岩盤で構成されている。2007年の末に釜石へ来て、頻回に起きるの地震のたびに、その前に聞こえて来る地鳴りに驚かされた。日本の各地に住み、どこでも多少は地震があった。しかし、地震の前に地鳴りが聞こえて来るのは釜石が初めてであった。地元の人たちは、それが当たり前なので、何とも思っていない。地鳴りがあると言うことは、よほど岩盤が硬いと言うことだろう。つまりは密度が高いのだ。岩手の太古の密度の高い地質が大きい重力として測定されていたのだ。東日本の特に太平洋側が重力が大きく、それは北米プレートに乗っており、その下に東から太平洋プレートが潜り込む。こうした状況では、北米プレートには相当の圧力が及び、密度をさらに緻密にしていた可能性がある。それが重力の異常な増大となって観測されていたのではないだろうか。地震により、圧力が解放され、密度も緩和されると、重力はそれまでよりも低下する。カーティン大学の重力世界地図は見事に環太平洋火山帯の大きい重力を表している。こうしたことからも米国の研究者たちは重力変化が地震、特に巨大地震の前兆として見ることが出来るのではとして、研究を進めているようだ。
菖蒲
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