エジプトでのCOP27を映像で記録したい…大学生2人が抱える地球温暖化への危機感と「わかりあえなさ」

2022年10月10日 12時00分
 地球温暖化がもたらす気候変動の現状を伝えようと、大学生2人が動きだした。11月にエジプトで開かれる国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)に足を運び、集まる人々の映像ドキュメンタリーの制作を試みる。政府や企業に変化を求め続ける2人は、「記録」こそが危機感の共有と対話につながると考えた。今月21日まで活動資金を募る。(小川慎一)

今年6月に国連の環境会議「ストックホルム+50」に参加した中村涼夏さん(本人提供)

 2人は、鹿児島大3年の中村涼夏すずかさん(21)=鹿児島市=と慶応大1年の山本大貴だいきさん(19)=東京都調布市。高校時代から温暖化対策の強化を求める若者グループ「Fridays For Future(未来のための金曜日、FFF)」の地元の団体で活動してきた。7月の参院選後、一度グループを離れて、自らを突き動かしてきた危機感は何だったのかを見つめ直そうと計画を練った。
 街頭やインターネット、時には国会で声を上げ続け、報じられる側にいた2人は、「若者」というだけで期待されてきたことに重圧を感じていた。そして、温室効果ガスを大量に排出する先進国で生きているという「特権」を自覚するようにもなったという。山本さんは「訴えるだけではなく、いろいろな立場の人の話を聞いて、発信したいと思うようになった」と話す。

経済産業省前に立ち、政府の温室効果ガス排出削減目標の大幅な引き上げを訴えた山本大貴さん(本人提供)

 新たな取り組みを2人は「record 1.5」と名付けた。「1.5」は、産業革命前と比べ、工業化で二酸化炭素(CO2)の排出が増えた世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えるという国際的な温暖化対策の目標を指す。既に1.2度上昇しており、7年後に1.5度に達するという研究もある。これを超えれば極端な気象による自然災害が増えるとされており、危機はすぐそばにある。
 最初の記録の舞台として選んだのは、11月6日からエジプトで始まるCOP27。この国際会議には政府関係者だけではなく、多くの若者、研究者、企業、そして報道機関が集まる。テーマの一つは「分断」を捉えること。途上国と先進国の若者が抱く危機感の違い、先進国内でも都市と地方、団体同士の「わかりあえなさ」に関心を寄せる。
 中村さんは日本のFFFの設立メンバーで、これまでに声を上げるFFFの運動と、政策提言する若者団体との埋めがたい溝を実感してきた。「危機感を共有するには、現状で広がっている若者たちの分断を映像で記録し、いつでも初心に立ち戻れるようにしたい」という。「record」には「何度も回して聞くうちに新たな発見があるレコード」の意味も込めた。
 映像ドキュメンタリーは若者、NGO、メディアなど七つのテーマで構成して各20分程度にまとめ、来年1月下旬ごろから上映会を開く予定だ。
 渡航費や活動費などを、ネットを通じたクラウドファンディングで21日午後11時まで募る。目標は650万円。支援は専用サイト「READY FOR」内のこちら

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