世界一律価格、日本に押し寄せる

ネトフリ13%値上げ
賃金が上がらない日本で、

iPhone購入時の負担感は重い
 

日経新聞 2021/06/22

 

 世界的なインフレ懸念が浮上する中、日本は消費者物価がほとんど上がらない。モノもサービスも、賃金も安くなったニッポンは物価上昇の波に向き合えない。グローバル企業は「安いニッポン」を考慮した値付けが多かった。もうそれもされない。どうしたら良いのか、日経新聞の6月22日(火)の一面記事の紹介です。

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  これまでグローバル企業は「安いニッポン」を考慮した値付けが多かった。動画や配送料が無料になる米アマゾン・ドット・コムのプライム会員。年会費は米国が119ドル(約1万3千円)、英国が79ポンド(約1万2千円)に対し日本は4900円と4割程度だ。ネットフリックスの値上げは、グローバル標準の価格が各国の経済事情とはお構いなしに入り込んできたことを示す。

賃金が上がらない国の負担は重くなる。その代表が日本だ。経済協力開発機構(OECD)などのデータでみると、日本で最高だった1997年の実質賃金を100とすると、20年秋時点で日本は90.3と減少が続いている。米国は122.2、英国は129.7、韓国は157.9だ。

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「ガラパゴス経済」に転機

この先に何が起きるのだろう。

ヒントは産業資材価格の奇妙な動きにある。主要な産業資材10品目の足元の価格を調べると、鉄を延ばした熱延鋼板で、海外の方が1~2割高い逆転現象が起きている。10年前には見られなかった風景だ。

「入荷は通常よりも3~4割少ない。鉄鋼メーカーが輸出向けを優先し、欲しい量を十分に買えない」。関東地方のある加工業者はこぼす。熱延鋼板の東アジアでの取引価格は、6月下旬時点で1トン1015ドル前後(約11万円)。安値を求めがちな国内の顧客に対し、割高でも即決で買う海外需要家を優先するのは自然な流れだ。

国際相場との乖離(かいり)の根底には、デフレマインドが強い日本の消費者を相手に、企業が最終価格を上げられない実情がある。

5月の企業物価指数は前年同月比4.9%高い103.9で、約13年ぶりの伸び率となった。一方で5月の消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く)の上昇率はわずか0.1%。原油高を背景に1年2カ月ぶりに前年同月比でプラスに転じたものの、ゼロ近傍にとどまる。

グローバル需要で決まる企業物価と、内需で決まる消費者物価のねじれが大きいにもかかわらず、企業は製品に価格転嫁できない。調達コストの吸収へ人件費の切り詰めに動き、非正規など労働者にしわ寄せが及ぶ。

その結果、消費も伸び悩み企業収益も低迷する悪循環が続いている。連合の神津里季生会長は「今の構造のままだと、社会全体での賃上げは難しい」ともらす。

製品の付加価値を高めて値上げし、賃上げにつなげるグローバル企業。この常識が通用しない日本にインフレの波が押し寄せてきた。「ガラパゴス経済」に転機が静かに忍び寄る。
 

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賃金水準、世界に劣後 脱せるか「貧者のサイクル」」

 

2年前のブログです。

全く変わっていません。

 

  過去20年間の時給をみると日本は9%減り、主要国で唯一のマイナス。国際競争力の維持を理由に賃金を抑えてきたため、欧米に劣後した。低賃金を温存するから生産性の低い仕事の効率化が進まない。付加価値の高い仕事への転換も遅れ、賃金が上がらない。「貧者のサイクル」を抜け出せるか。