内容説明
開国による西洋文化の流入が、わが国の芸術や文学に多大な影響を与えた明治時代。日本で独自に発展した芸術もまた、遠い英国の地の芸術文化に影響を与えていた―。本書は、本の装丁や挿絵デザインの「美」に着目したユニークな章など全10章に加え、著者自身の英国での経験もふまえた随想6篇から、20世紀初頭以降今日に至るイギリスと日本の「美」の奥深い関係性を浮かび上がらせた一冊である。カラー口絵および本文中に多くの絵画図版を収録!
目次
第1章 一九〇〇年のロンドンと漱石
第2章 ラファエル前派と『白樺』
第3章 ラスキンの影、ターナーの光
第4章 ロセッティと日本
第5章 明治時代のワッツ熱愛
第6章 ビアズリーと日本
第7章 ビアズリーとリケッツ―イギリスのジャポニスム
第8章 装丁・挿絵・活字―本の文化と歴史
第9章 リチャード・ダッドと清原啓子
第10章 すべてはモリスとの友情から始まった
著者等紹介
河村錠一郎[カワムラジョウイチロウ]
一橋大学大学院言語社会研究科名誉教授。イギリス世紀末美術・文学専門(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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六点
76
「風流な土左衛門」と漱石居士に言わしめたミレイから始まり、ピアズリーが『北斎漫画』から受けた受けた影響。日本の現代アーティストが19C英国絵画から受けた影響。それらを美術展の図録に掲載した論文によって明らかにしている。六点は美術に趣味を持たぬので、そも、「ラファエロ前派とはなんぞや」と言うレベルであったが、中世古写本に範を取り作られた「装丁趣味」とも言うべき本など、新しい美に触れることができた。日本美術の「余白の美」の影響を強く受けて、進歩を遂げたそうだ。読み友EMI様のご紹介である。2022/05/13
Go Extreme
4
1900年のロンドンと漱石 ラファエル前派と『白樺』 ラスキンの影、ターナーの光 ロセッティと日本 明治時代のワッツ熱愛 ビアズリーと日本 ビアズリーとリケッツ―イギリスのジャポニスム 装丁・挿絵・活字―本の文化と歴史 リチャード・ダッドと清原啓子 すべてはモリスとの友情から始まった2021/11/07
justdon'taskmewhatitwas
3
展覧会図録に附する論評集であり推論・創作を深くするものではないが、装丁・挿絵・活字について製本工芸を語るくだりは要約が小気味良くその変遷を鮮やかに活写しており、カソリック解禁に発したゴスブーム、即ちラファエル前派(PRB)史をモリスとバーン=ジョーンズのイタリア旅行が終章を飾る構成は大胆にして繊細と感じ入った。また漱石の恋愛心理小説はPRB内の色恋醜聞が元ネタになっているという説、19世紀末のジャポニズムに春画が含まれているという事実は、個人的に旧聞を改めた気づきだった。2024/02/22
おがわ
3
ワッツ〈花選び〉、藤島武二〈蝶〉。明治日本のワッツ熱。 /ラスキン、ターナー賛美。自然をそのまま書く。 /ロセッティと日本。まず詩人としての受容、日夏耿之介による唯美主義、反時代的、時勢に反した高踏的⇄ロセッティ、モリス、産業革命への反発、社会主義的傾向、時代を先導する形に。 /バーンジョーンズ、ミケランジェロの肉体への心酔。 /モリスの死、バーンジョーンズとの友情。 /清原啓子、リチャードダッド、狂気の妖精画家の影響。2023/04/28
takakomama
2
美術展の図録や雑誌、画集などに寄稿した、イギリス美術と日本の関わりについての文章を集めた1冊。2019年の「ラファエル前派の軌跡展」に行き、先日に「草枕」を読み終え、今、北斎の映画が上映されているので、私にとってはタイムリーでした。2021/06/06