プーチン止められず北方領土も戻らず。安倍外交「やってる感」の末路

2022.03.23
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2月27日に放送された報道番組で「核共有」の議論の必要性を口にし物議を醸した安倍元首相ですが、どうやらそれは安倍氏の姑息なごまかしの一つに過ぎないようです。元毎日新聞で政治部副部長などを務めたジャーナリストの尾中 香尚里さんは今回、このタイミングでの元首相の核武装論とコロナ禍での改憲論との間に共通項が見て取れるとして、その理由を解説。自らの力の無さが露呈した際に批判をそらすため安倍氏が用いる、このような「政治手法」を批判的に記しています。

プロフィール:尾中 香尚里(おなか・かおり)
ジャーナリスト。1965年、福岡県生まれ。1988年毎日新聞に入社し、政治部で主に野党や国会を中心に取材。政治部副部長、川崎支局長、オピニオングループ編集委員などを経て、2019年9月に退社。新著「安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ」(集英社新書)、共著に「枝野幸男の真価」(毎日新聞出版)。

ロシアのウクライナ侵攻と安倍氏の「核共有」論

ロシアによるウクライナ侵攻から、明日24日で1カ月。事態を憂慮しているが、同時に、この問題に対峙する日本の政治家の姿に目を向けることも忘れてはいけないと思う。ロシアが当事国であるだけに、プーチン大統領と個人的関係があったと「される」安倍晋三元首相に、やはり目を向けずにはいられない。

プーチン氏との良好な関係を誇示していた安倍氏が、世界を震撼させている現在の事態に、積極的に役に立とうとしていない。それどころかこの状況に乗じて「日本核武装論」まで展開してのける。そんな安倍氏を見ていると、筆者はなぜか、首相時代のコロナ対応を思い出してしまうのだ。

ロシアのウクライナ侵攻とコロナ対応では、全くジャンルが違うと思われるかもしれない。だが、筆者はここに「非常事態における政治指導者の振るまい方」という共通項をみる。

安倍氏はコロナ禍のような困難な政治課題に直面すると、問題解決のために「今すぐにできること」を模索し、地道に汗をかくことを十分にしてこなかった。そして、解決できない理由を法律や制度の不備などに転嫁し、自分の能力のなさから国民の目をそらした上で、いきなり実現不可能な「大風呂敷」を広げ、「不要不急の」政治課題に強引に引きつけて「やってる感」を演出してきた。

こうした安倍氏特有の振る舞いが、ウクライナ情勢においてもみられたと筆者は考える。

コロナ禍における安倍政権の振る舞いを思い出してほしい。

安倍氏は最初のうちこそ「一斉休校要請」「大規模イベント自粛要請」などを大々的に打ち上げたが、結果として感染拡大を止めることにも、コロナ禍で打撃を受けた国民を救うことにも、まともに対応できなかった。すると安倍政権は、対応の不備を「国民のせい」にしようとした。

「37.5度の発熱4日間以上」という「相談・受診の目安」を設けるなど、国民にPCR検査をできるだけ受けさせないようにする施策を取っておきながら、いざ検査件数が伸びないことを批判されると、目安の解釈について「国民の誤解」だと主張した。飲食店などが安心して休業できるための補償措置をとらなかったにもかかわらず、倒産を恐れ休業要請に応じない店が出ると、批判の矛先を店側に向けた。

やがて安倍政権は、国民が政府の要請に十分に従わないのは「法律に罰則がないから」などと言い、自分たちの対応のまずさを制度や法律の不備に転嫁した。最後には「憲法のせい」にして、改憲による緊急事態条項の制定の必要性にまで言及した。

こういう安倍氏の言動に、筆者は逆に「危機感のなさ」をみた。

非常事態に行政がやるべきことは、いつ実現するか分からない憲法改正を叫ぶような「政治ごっこ」ではない。今目の前で苦しむ国民の命や暮らしを守るため、現行法や制度を使い倒して「今すぐにできること」に集中することだ。仮に緊急事態条項の制定がコロナ対応に役に立つとしても、憲法改正にどれだけの時間がかかり、その間にどれだけの国民が命を落とすのかを冷静に考えれば、この事態を前に行政のトップが憲法改正という「夢物語」を口にすることなど、普通ならとてもできないはずだ。

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