内容説明
拡大する大学の本質(自律性)と国家・党の多元的な関与との葛藤―。フランスによる植民地支配や南北統一による社会主義化などの社会変動を経験したベトナムでは、1986年のドイモイ政策以降、中央集権的計画経済から市場経済への「体制移行」が進んでいる。社会主義国家における市場原理導入というある種の矛盾を孕んだこの「体制移行」は、ベトナムの高等教育において、民営大学の多元化/国家や共産党の関与という複雑な状況を生み出した。中国・ロシアという体制的な類似性の高い国家との比較分析や、大学管理に関わる非教育行政部門といった独創的な着眼点から、ドイモイ政策以降今日に至るベトナム高等教育の構造変化を通時的に明らかにした気鋭の労作。
目次
序章 研究の目的と課題
第1章 体制移行国における高等教育の構造変動:ロシアと中国を事例として
第2章 「国家社会主義体制」のベトナムにおける高等教育の構造
第3章 ベトナム高等教育における民営大学の管理運営改革
第4章 ベトナム高等教育における公立大学の管理運営改革
第5章 ベトナムの大学管理運営における多数省庁所管方式の構造と論理
第6章 ベトナムの大学管理運営における党による関与の構造と論理
第7章 現代ベトナムにおける高等教育の構造改革の論理
終章 「体制移行」という視角からみえるもの
著者等紹介
関口洋平[セキグチヨウヘイ]
1986年生まれ。京都大学教育学部卒業。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。比較教育学専攻。日本学術振興会特別研究員を経て、現在、広島大学教育開発国際協力研究センター研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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