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[号外]

 これは、日々のブログとは別扱いの号外編です。以前、私があるベンチャーキャピタルに提出したわが社の事業計画書です。

 結果的には事業化できませんでしたが、これは私の公文書のようなものなので、私に断りもなく勝手に廃棄されたのでは困ります。

 元はフェイスブックのノートコーナーに掲載していた(2012.6月頃)のですが、いつのまにかノートが廃止になっていたらしく、どこにもこの文書が掲載されていないので、とりあえず、こちらに掲載しておくことにしました。

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[事業計画書]

1.事業の概略

(1)〔事業分野〕

 情報通信分野。インターネット関連の事業


(2)〔事業のテーマ〕

 全く新しい発想で開発したインターネット上の“市場創造型プラットフォーム”システムによって、縦横無尽な知的コンテンツ配信事業を展開する。


(3)〔事業の要約〕

[構想しているシステムの基礎的な流れ]

1)インターネット上に二つの構成要素からなるプラットフォームを構築し、知的コンテンツ(音楽、映像、美術、文芸、漫画、コンピュータソフトなど)を有料で配信するサイトを開設して事業展開する。

2)まず、知的コンテンツのクリエーターが、本サイト上に自分の作品をアップロードする。自分が権利を保持しているコンテンツなら、誰もが自由にアップロードできる。

3) (ダウンロード販売システム) 一般ユーザーは、アップロードされた知的コンテンツを試聴し、好みの知的コンテンツをあらかじめ決められた方法で料金を支払ってダウンロード購入する。

4) (クリエーター支援システム) また、一般ユーザーは、あらかじめ自身を登録しておくことにより、試聴した知的コンテンツに対して投資できる。

5)投資金は、コンテンツのクリエーターが受け取る。また、投資したユーザーは、投資額に応じた一定の比率で、ダウンロード販売の収益の一部を分配金として受け取る。


 [事業の目標]

1)ネット業界では、“ヤフー”や“グーグル”が定着させた“広告掲載”のビジネスモデル以来、新しい本格的なビジネスモデルが誕生していない。

2)ネット広告のニーズが無限に広がるわけもなく、ネット広告の競争は熾烈になる一方。今、ネット事業で必要なのは、新しいタイプのビジネスモデルである。

3)まずは、この新しいプラットフォームをネットユーザーに知らしめる。そして、これを、ネット本来の特長を最大限に生かしたビジネスモデルとして確立させる。

4)このシステムが一定程度定着化できた段階で、広告配信事業その他の導入可能な一般的なビジネスモデルにも展開する。


 [動機]

1)わが国は、既存勢力(音楽業界ならレコード会社など)の影響力が強すぎて、消費者が求める“良質なコンテンツを安く提供する”類のシステムの普及が遅れている。

2)米国の音楽市場は、2011年実績では、音楽ネット配信は、前年比9.2%増の34億3010万ドル(約2795億円)で、CDなど従来メディア販売は同7.7%減の33億8110万ドル。全体としては、伸びている。

3)一方、わが国の音楽市場は、2011年のCDなどの国内生産額は年間2800億円程度で米国とほぼ同規模だが、ネット配信は前年比16%減の719億円と低調。米国の4分の1程度にとどまっている。しかも、全体としても、ここ数年は縮小している。

4)わが国では、新しいシステムが古いシステムに取って代わるのでもなく、単に音楽業界全体が廃れているのである。逆説的には、だからこそ、チャンスも大きい。


 [従来サービスの問題点等]

1)コンテンツのダウンロード販売自体はかなり一般的になってきたが、未だ“単なる既存のコンテンツをインターネット上でダウンロード販売する発想”に止まっている。これでは、次の二つの点で限界がある。

2) (確立された権利関係が複雑すぎる) 音楽分野では、“著作権料”や“原盤印税”さらには“アーチスト印税”など、権利が複雑に入り組んでいる。つまり、気軽にダウンロード販売システムに乗せることが難しい。

3) (新人の活動が活性化しない) 既にある程度の人気を有している者のコンテンツならダウンロード販売もある程度は見込めようが、無名の新人等はレコード会社等の宣伝力に左右されるために人気化する可能性は低く、また、新しい活力も生じない。

2.事業化のスケジュール

(1)〔現在までの進捗状況〕

 [日本において]

1)プラットフォームの技術開発の面では、スピードは遅いが、着実に進んでいる。この技術は平成14年に特許申請し、平成22年に特許が成立した(特許第4497508号)。

2)この技術の事業化の面は、資金調達その他の面の課題を克服できず、進んでいない。


 [米国において]

1)日本と並行して米国にも国際特許出願しているが、米国のその方面の事情に精通していなかったために特許審査に大変に手間取っている。弁護士を変更したりの対応によって、本年中には特許が成立すると期待している。

2)事業化の面では、資金調達その他の面の課題を克服できず、進んでいない。


 [特許に固執する理由]

1)インターネット関連の事業は、発想のユニークさがポイントである。サーバーのプログラムやホームページ作成の技術自体は基本的には単純なので、いったん世間に発表した技術は驚くべき早さでマネをされる。

2)マネをされれば資金が豊富な企業には太刀打ちできない。よって、ネット事業では、事業化の前に、まず、特許を取得しておくことも大切である。


(2)〔今後の想定〕

 [サイトの立ち上げ]

1)日本では、当初は、音楽分野に的を絞って事業化を進める。本システムは、知的コンテンツ全般を網羅する技術だが、当面の事業化で成功可能性が高い分野として音楽分野を想定している。

2)音楽分野の事業がある程度定着してきた段階で、音楽以外の分野の事業化や米国進出などを順次模索する。

3)ともかく、とりあえずは、サイトを立ち上げなければならない。これはプログラム等の作成などに約3ヶ月、デバッグその他に少しゆとりをもっても6ヶ月で可能。


 [当面の資金等]

1)サイトの立ち上げに際しては、最初からガチガチに固めたやり方はしない。例えば、利用するデータベースエンジンなどにしても、最初から大がかりなシステムにすると費用だけが嵩み、逆に、融通がきかない“無用の長物”にもなる。

2)ユーザーの反応なども見ながら、徐々に細部の改善を進めつつ管理プロセスを洗練し、それが固まった段階で、本格的なシステムの導入やロボット化に移行していく。

3)そのような、ネット事業に適した“小さく生んで大きく育てる方式”の開発のやり方をすれば、当初資金(外注費等の外部にかかる費用として)は数百万円でも可能と想定している。もちろん、どんな陣容で開発に取り組めるかでかなり違ってくる。


3.事業の課題と可能性

(1)〔克服すべき課題、懸案事項、リスク等及びその克服方法〕


 [課題等]

1)ネットユーザーは、これまでインターネットが無料のシステム(例えば、“You Tube”など)を中心に利用を伸ばしてきたこともあって、料金を払ってコンテンツを購入する習慣が根付いていない。

2)近年になって、アップルの“iTunes”などの取り組みにより、ユーザーは、妥当な金額ならばコンテンツのダウンロードに対しても料金を払ってくれることがわかった。

3)ただし、その許容金額は、1曲100円前後と安い。ちなみに、シングル版CDは2曲で1000円前後が一般的で、1曲なら500円相当。

4)音楽の場合、いわゆる“著作権料”は6%に決められている。1曲500円なら、30円が著作権料になる。なお、“原盤印税”は10%で、“アーチスト印税”は1%、容器代が10%で、CDショップが30%というのが一般的な分配基準である。

5)仮に、1曲のダウンロード料金を100円とすれば、従来の基準で各種の権利者に印税等を支払えば、事業主体には何も残らないどころか、場合によれば赤字になる。

6)つまり、もともと安価なダウンロード販売をめざしている上に、そのコンテンツに投資してくれた支援者に収益の一部を分配すれば、ダウンロード料金をいくらに設定するかにもよるが、事業主体に残るダウンロード販売の収益はわずかになる。


 [課題の克服方法等]

1)幸いなことに、音楽分野では、最近のアーチストはCDそのものの販売を主たる目的としてはいない。CDは、いわば“名刺代わり”の位置づけで、彼ら自身は収益の柱として“ライブ活動”に主眼を置いている。

2)しかも、自分で作詞や作曲などをすることが多い、いわゆるインディーズ系のアーチストなら、必要な権利料は基本的には著作権料くらいになる。コンテンツ流通途中に余計な業者がいないから交渉は早く、ダウンロード料金を安くしても採算も合う。

3)音楽の場合は、“ライブ活動”という収益源があるのが心強い。つまり、ダウンロード販売は話題を盛り上げられればそれでいいという面がある。音楽アーチストのように“ライブ活動”の場がない他の分野では、本事業を成功させるのは難しい面がある。

(2)〔事業の可能性、売上見通し〕


 [可能性等]

1)本システムは、ネットユーザーが待ち望むシステムである。あらゆる段階に自分が積極的に参加するスタンスでコンテンツのクリエーターを支援でき、また、自分がコンテンツに投資することは、クリエーターを支援する動機づけの強化にもなる。

2)ところで、最近では、特定のアーチストのCDしか売れていない。有名なところでは、AKB48のCDだけが軒並み売れている。

3)それは、実は、“曲が売れている”のではない。音楽プロデューサー等の“仕掛け”によって特定のファン層がCDをまとめ買いしている。CDに付属する“投票券”や“握手券”などがその仕掛けの正体。投票券や握手券が売れているのである。

4)要するに、音楽ファンの多くは、曲をじっくり聴くこともさることながら、好みのアーチストを各側面で一緒に盛り上げてやりたいのである。昔から、洋の東西を問わず、芸術家などには“パトロン”や“タニマチ”と呼ばれる熱心なファンがついていた。

5)音楽分野で、ライブ活動を主な活動舞台にしている3000組以上もいるというインディーズ系アーチストをターゲットにすれば、本事業成功の可能性は高い。アーチストだけでなく、投資した一般ユーザーも巻き込んで、大きな活力が生じるに違いない。


 [音楽分野の売上想定等]

1)上記で指摘したように、わが国のCD売上は2011年実績で年間2800億円程度。だが、実は、2000年頃は5000億円を超えていた。

2)統計がないのではっきりした数字は不明だが、一般に、インディーズ系のCD売上は全体の6~10%程度が定説になっている。現段階では、インディーズ系の市場規模は年間200億円強と見ておけば良い。

3)ダウンロード販売も、期間は明言できないが、米国の業界事情などを見れば、2~3年で同程度に成長する可能性は高い。もちろん、当初はインディーズ系のアーチストが主なターゲットだが、何も、インディーズ系だけを対象にする必要はない。


その他〔特にアピールしておきたい事項〕

1)本システムは全く新しいタイプの“ビジネスモデル”。ここでいうビジネスモデルとは、収益をあげる仕掛けのことで、本システムは、単に既存のコンテンツを売るのではなく、一般ユーザーと一緒になって、新市場を創造するビジネスモデルである。

2)ネット事業は、長い間、無料で利用できるシステムとして発展してきたこともあり、人気化したサイトでも“広告掲載”程度しか収益をあげる手段がなかった。

3)“物販系”システムは販売手数料や出店料などの名目で販売業者の売上げ一部を徴収することはできるが、そのやり方はいずれ限界がくる。誰もが簡単に追随できるから、最終的には“安売り競争”になる。これは、何も、ネットに限ったことではない。

4)また、本来、ネットは“双方向で自在にやりとりする”ことで最大の効果を発揮するシステムである。一方通行的な発想のシステムでは人気化しない。昨今のSNSの隆盛がそれを物語っている。

5)コンテンツ配信事業で言えば、誰もが自分のコンテンツを自由にアップロードでき、そして、誰もが自由にダウンロードできるのが理想である。

6)“You Tube”はその代表格。人気もある。ただし、それらのほとんどは著作権などを無視した違法システムで、基本は無料なので、クリエーター本人にはメリットもない。

7)それを“合法的”かつ“有料”で運営でき、しかもユーザーが熱狂的に参画してくれるうまい仕掛けが求められており、本システムは、その回答だと確信している。

8)最近注目されはじめたクラウドファンディング(プロジェクトに必要な資金をネットを通じて広く有志から集めて実現するしくみ。著名なのは、Kickstarter)のシステムも、基本的には同じ発想のシステムである。

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 なお、チャート等は私のホームページをご覧ください[→ http://www4.j-pal.ne.jp/~intelligence/2001/bmjp.html

以上

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