新約聖書のマルコ

「マルコによる福音書」に冠された、マルコの本名はヨハネという。しかし、ヨハネは一般的な名前であるために、彼はマルコと呼ばれた。マルコの人物像を推測できる記述が、新約聖書中に7つ見いだせた。彼は、イエス、十二弟子、バルナバ、パウロそしてルカにつきまとっていた。彼は人懐っこい性格で、だれからも愛された。彼が福音書を書いた動機に関しては、ルカの影響が大きいであろう。マルコは絶えず書き物をしていたルカから記録の重要性を教えられた。マルコがルカからも愛されたであろうことは容易に推測できる。

(1)マルコとイエスとの関係
(マルコ)14-50弟子たちは皆イエスを見捨てて逃げ去った。14-51ときに、ある若者が身に亜麻布をまとって、イエスのあとについて行ったが、人々が彼をつかまえようとしたので、14-52その亜麻布を捨てて、裸で逃げて行った。
(解説)この若者はなぜイエス一行について行ったのか。それは、最後の晩餐が、このマルコの母の家で行われたからにほかならない。イエスの話を聞いていたマルコは、パジャマ姿のままで、護身用の剣を持って、イエス一行についていったのである。

(2)マルコの裕福な実家(エルサレム)
(使徒行伝)12-12ペテロはこうとわかってから、マルコと呼ばれているヨハネの母マリヤの家に行った。その家には大ぜいの人が集まって祈っていた。12-13彼が門の戸をたたいたところ、ロダという女中が取次ぎに出てきたが、12-14ペテロの声だとわかると、喜びのあまり、門をあけもしないで家に駆け込み、ペテロが門口に立っていると報告した。
(解説)マルコの家の大きさの分かる記述である。この家以外に、イエス一行が最後の晩餐をできる部屋を提供できる所はない。この家の女主人とイエスの母たちは、イエス在命中にすでに懇意であったとする方が自然である。後日、テオピロの命を受けたルカの一行がカペナウムからやってきた時、イエスの母のマリヤをここに捜し当てたであろう。

(3)出家が母に認められたマルコ
(使徒行伝)11-27そのころ、預言者たちがエルサレムからアンテオケにくだってきた。11-28その中のひとりであるアガポという者が立って、世界中に大ききんが起こるだろうと、御霊によって預言したところ、果たしてそれがクラウデオ帝の時に起こった。11-29そこで弟子たちは、それぞれの力に応じて、ユダヤに住んでいる兄弟たちに援助を送ることに決めた。11-30そして、それをバルナバとサウロの手に託して、長老たちに送りとどけた。
(解説)この間に、別の話が挿入されている。
(使徒行伝)12-25バルナバとサウロとは、その任務を果たしたのち、マルコと呼ばれていたヨハネを連れて、エルサレムから帰ってきた。
(解説)マルコはまだ若すぎる。親の承諾なしには宣教活動はできない。彼が出家するについては、母マリヤの承認があったはずである。

(4)宣教の戦線を離脱したマルコ
(使徒行伝)13-13パウロとその一行は、パポスから船出して、パンフリヤのベルガに渡った。ここでヨハネは一行から身を引いて、エルサレムに帰ってしまった。
(解説)このヨハネはマルコのことである。このヨハネはバルナバのいとこである。

(コロサイ人への手紙)4-10わたしと一緒に捕われの身となっているアリスタルコとバルナバのいとこマルコとが、あなたがたによろしくと言っている。このマルコについては、もし彼があなたがたのもとに行くなら、迎えてやるようにとさしずを、あなたがたはすでに受けているはずである。

(5)バルナバとパウロの不仲の一因となったマルコ
(使徒行伝)15-37そこで、バルナバはマルコというヨハネも一緒に連れて行くつもりでいた。15-38しかし、パウロは、前にパンフリヤで一行から離れて、働きを共にしなかったような者は、連れて行かないがよいと考えた。

15-39こうして激論が起こり、その結果ふたりは互いに別れ別れになり、バルナバはマルコを連れてクプロに渡って行き、15-40パウロはシラスを選び、兄弟たちから主の恵みにゆだねられれて、出発した。15-41そしてパウロは、シリヤ、キリキヤの地方をとおって、諸教会を力づけた。16-1それから、彼はデルベに行き、次にルステラに行った。そこにテモテという名の弟子がいた。


(6)パウロの信頼を取り戻したマルコ
(テモテへの第二の手紙)4-11ただルカだけが、わたしのもとにいる。マルコを連れて、一緒にきなさい。彼はわたしの務めのために役にたつから。4-12わたしはテキコをエペソにつかわした。
(解説)マルコは成長してパウロの信頼を取り戻していた。

(7)ペテロとローマにいるマルコ
(ペテロの第一の手紙)5-12わたしは、忠実な兄弟として信頼しているシルワノの手によって、この短い手紙をあなたがたにおくり、勧めをし、また、これが神のまことの恵みであることをあかしした。この恵みのうちに、かたく立っていなさい。5-13あなたがたと共に選ばれてバビロンにある教会、ならびに、わたしの子マルコから、あなたがたによろしく。5-14愛の接吻をもって互いにあいさつをかわしなさい。キリストにあるあなたがた一同に、平和があるように。

(解説)バビロンとはローマのことである。ペテロの手紙を代筆したシルワノという人物は、パウロの「テサロニケ人への手紙」の冒頭にも登場する。使徒行伝の記述では、シルワノではなくシラスという名前が使われている。シルワノはパウロと別れたあと、ペテロやマルコと行動を共にしたことになる。
   
このマルコと呼ばれたヨハネにも、終生イエスの力が働き続けたことがうかがえる。彼の母、いとこのバルナバ、彼らもまたキリスト教の礎を築いた人々ということができる。
  
 
    
 
2011/4/13 笹倉キリスト教会 笹倉正義
2011/6/12、2011/9/4、2011/11/25、2012/8/26

聖句引用:日本聖書協会 口語訳聖書