野ウサギ駆除のウイルス散布へ ニュージーランドで
ニュージーランド当局は今月、急速に繁殖する野ウサギを駆除するウイルスを散布する。
同国の一部の地域では、野生のウサギは有害鳥獣と考えられている。当局は、ウサギに効果がある兎出血病ウイルスの一種、「RHDV1-K5」を散布することでウサギの増殖を抑えたい考え。
農業団体はウイルス散布を支持しているが、ペットのウサギに影響を及ぼす可能性はないのか懸念する声も出ている。
なぜニュージーランドで野ウサギは問題になっているのか
1830年代にウサギが最初にニュージーランドにやってきて以来、農家は農産物への被害に悩まされてきた。
野ウサギは、放牧地で家畜が食べる草を食べてしまったり、穴を掘って土地を荒らす可能性がある。
ニュージーランドの第1次産業省によると、野ウサギによる被害額は、生産減少による損失が毎年平均5000万ニュージーランドドル(約38億4000万円)で、除去のコストは2500万ニュージーランドドルに上るという。
ウサギの数の管理
野ウサギの数を管理する主な手段には、猟や毒餌、巣穴の薫煙などがあるが、より穏やかな方法としては、ウサギ用の柵の設置がある。
しかし当局は、従来の方策では対応できないほど問題は大きくなっていると主張する。
兎出血病ウイルスの初期タイプは、1997年にニュージーランドに導入された。
ウサギのみに影響があるウイルスで、当初は非常に効果を出したが、導入から20年余り経過し、ウサギは耐性を持つようになった。
新しいウイルスの「RHDV1-K5」は、韓国から導入される。ウサギの内臓に影響を及ぼし、発熱やけいれん、血栓や呼吸不全を引き起こす。
第1次産業省によると、「RHDV1-K5」は従来のものより効果が出るのが早く、感染から2~4日でウサギを殺傷する。
市民の反応
国民の意見は分かれている。
ニュージーランドの農業者連盟は、ウサギ駆除を「非常にほっとした」と歓迎した。同連盟のアンドリュー・シンプソン広報担当者はBBCに対し、「とても困っている農家がいる」と語った。
「ウイルスの使用をもう1年遅らせていたら、一部の土地への環境ダメージは想像を絶するものになっていた」
しかし、動物虐待防止協会のアーンジャ・デイル氏は、「影響を受けるウサギの苦しみやペットのウサギへの危険性」を考えると、ウイルス散布の決定は残念だと述べた。
デイル氏は、「より人道的な方法が使われれるよう求めていく」と述べた。
同協会は、ペットのウサギのために作られたワクチンは「十分な試験を経ておらず、(中略)防御になるという十分な証拠が得られていない」と指摘した。
しかし、第1次産業省は、「RHDV1-K5」はオーストラリアで昨年散布されているものの、ワクチンを投与されたペットのウサギが死亡したという報告はないとして、ワクチンでペットのウサギの安全は確保できると説明している。