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大地震によって浜岡原発全体で事故が起こったら

03/5/14  上澤千尋(原子力資料情報室)浜岡訴訟資料)

浜岡原子力発電所を,地震の専門家のあいだで想定されているような東海地震が襲ったら,どういう放射能被害が予想されるか,いくつかの条件をおいて計算してみました。

結果から先にいうと,発電所から風下方向の70キロメートルまでの範囲の人全員が全身被曝によって死亡し,110キロメートルの範囲の人の半分がやはり全身に浴びた放射線や放射能によって死亡する,という被害予想がでてきました。

浜岡原発から70kmといえば静岡県のかなりの範囲に及びますし,110キロメートルだと静岡県全体と愛知県の半分以上と山梨県の半分程度がその範囲に含まれ,これらの地域がその放射能の害を被る危険性があるということになります。


(上の図は、原子力資料情報室の計算を元に「通販生活」編集部が作成したものです)

計算の結果は,白血球の異常や脱毛,皮膚の異常,脱毛など早期に現れる健康障害(急性障害)が,350キロメートルの範囲までおよぶ可能性があることを示しています。ガンなどによる健康被害ははるか遠くまで及びます。

地震が原発の敷地を襲ったとき,1つの原子炉だけで事故が起こると考えるのでは十分ではありません.つぎつぎと多発的に事故が発生する危険性が高いのです。

浜岡原発にある1号炉・2号炉・3号炉・4号炉・5号炉のうち,建設中の5号炉をのぞく4つの発電所が運転中に地震に襲われ,施設の安全システムが破壊し,原子炉の冷却装置が働かなくなり,核燃料を閉じ込めている容器がこわれて,大量の放射能が環境中に放出されます。

チェルノブイリ原発で起きたような規模の放射能放出事故が,4 つの原子炉で次々に起こり,原子炉の事故に引き続いて建物内にあった使用済みの核 燃料のプールまでが干上がって環境中に放射能をまき散らす,ということを想定して 被害の予想を行ないました。

雨が降ればスポット的に放射能の汚染の高い地域が出て来て,地面が乾いたあとに放射能の再浮遊によって被曝も考慮しなければなりません。風が強ければ,放射能は薄まりながらより遠くまで広がってゆきます。風向きや風速,降雨の有無などによって,計算の結果に大きな幅が出て来ます。この計算結果もその一つだと考えてください。

【参考】原子力施設の破局事故についての災害評価手法