湾岸部の宅地、液状化対策が急務 浦安の教訓
千葉県浦安市は、東日本大震災後の応急危険度調査で「危険度あり」と判断した建物が約1割に達したと2011年3月16日に発表している。3月15日までに調べた建物について、被害状況を公表したものだ。同市では、埋め立て地の道路や下水などでも被害が多発した。
「揺れの長さが被害を拡大」
そして、思いのほか液状化被害が拡大した理由を、こう推測する。「本震時の東京湾周辺の最大加速度は200ガルほどだった。加速度に対する被害の度合いは大きい。揺れが長く続き、繰り返しせん断力が数多く作用したためではないか」
歩道やその下に埋設された下水などのライフライン、戸建て住宅の敷地周辺で被害が目立つ半面、大規模な建築物自体では被害がほとんど出ていない。地盤改良や杭(くい)基礎の採用が奏功したもようだ。
千葉市美浜区の埋め立て地に建つ幕張メッセなどの大規模施設が一例だ。JR海浜幕張周辺の建物敷地では、「サンドコンパクションパイルを中心とした地盤改良を実施した所が多く、液状化による建物被害を防げた」(不動テトラ地盤事業部技術部の原田健二担当部長)。
マンホールの被害は中越地震ほど目立たず
他方、歩道や駐車場では大量の噴砂が発生。沈下をはじめとした被害が確認できた。路床や路盤などが厚い車道の被害は少なかった。
マンホールの浮き上がりも生じたが、2004年の新潟県中越地震に比べて被害は目立たなかった。同地震の被災地の一部では、マンホールを埋めた地盤が透水性の低い腐植土や粘土だったため、埋め戻し土が液状化しやすくなり、浮きが顕著になったとみられている。
東京湾岸でのマンホールの浮き上がりが新潟県中越地震よりも目立たなかった理由を、横浜市内を中心に液状化調査を進める関東学院大学の規矩大義教授は解説する。「マンホール設置時の埋め戻し土と埋め立て材に砂が使用され、互いの透水性などが比較的近かった分、浮上を抑制できたのだろう」
付帯設備への配慮も不可欠
湾岸部の住宅地であっても、液状化対策はほとんど講じられていない。戸建て住宅で液状化に対して十分な地盤改良などを実施する例は、コストの高さが響いて限られている。べた基礎などで済ます例も珍しくない。液状化への備え不足が、宅地での大きな不同沈下につながった。
地下に設置するピット型の機械式駐車場でも被害が出た。横浜市金沢区内の湾岸部に建つ集合住宅では、ピット型の駐車場が液状化で浮上。周辺地盤との間に最大で1.5mほど段差が生じた。この住宅を分譲した神奈川県住宅供給公社事業部は、こう説明した。「図面などは所有者に渡しており詳細は分からない。住棟は杭基礎を採用したと思われるが、地下駐車場の基礎や地盤改良の状況は不明だ」
(日経アーキテクチュア 浅野祐一)
[日経アーキテクチュア2011年4月10日号の記事を基に再構成]
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