写真●「Oracle OpenWorld 2010」の基調講演に登壇した米オラクルのラリー・エリソンCEO
写真●「Oracle OpenWorld 2010」の基調講演に登壇した米オラクルのラリー・エリソンCEO
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 「クラウドコンピューティングとは何か」。米オラクルの年次イベント「Oracle OpenWorld 2010」の基調講演は、ラリー・エリソンCEOのこんな問いかけで幕を開けた(写真)。

 エリソンCEOと言えば、クラウドに対する懐疑的な見方で知られる。この日もクラウドに対する疑問を観衆に投げかけた。「クラウドとは何が新しいのか。インターネット上で稼働するアプリケーションはすべてクラウドなのか。それともアプリケーションのプラットフォームのことか」。

 問いかけに対応する形で、エリソンCEOはクラウドの代表例を二つ挙げて、自身の見解を述べた。一つめはセールスフォース・ドットコムである。「主な用途はSaaSによるアプリケーション。PaaSであるForce.comは独自技術に基づいており、用途は限られる。仮想化技術を使っておらず、多数の顧客が同一のデータベースを使っている。このため一社の影響が他にもおよび、セキュリティや信頼性に難がある。さらに柔軟な拡張性も備えていないため、ある顧客の処理負荷が高まったら、他の顧客の要求を絞らなければならない」。

 もう一つの代表的なクラウドとして、エリソンCEOが挙げたのはアマゾン・ドット・コムだ。「アマゾンのEC2は汎用的であり、稼働するアプリケーションを選ばない。仮想化を駆使した柔軟なプラットフォームだ」。

 「セールスフォースもアマゾンも、クラウドと呼ばれる。それはそれでいいだろう。ただし、両者は全く違うものだということに注意する必要がある」。エリソンCEOはこう述べた上で、「オラクルのクラウドの定義は、アマゾンとほぼ同じだ。仮想化され、柔軟性に富んだ、アプリケーション基盤。これがオラクルの考えるクラウドだ」と、同社の定義を説明した。ただし「オラクルはパブリックかプライベートかを問わず、両方の環境でクラウドを実現する。この点はアマゾンと異なる」。

 オラクルのクラウド感を披露したエリソンCEOが、それを具現化したシステムとして発表したのが「Exalogic Elastic Cloud」である(関連記事)。「Exalogic Elastic Cloudはいわば、Cloud in a Boxと言うべき製品だ。クラウドを構成するためのソフトとハードを組み合わせ、動作や信頼性、性能を事前に徹底的に検証し、チューニングした状態で出荷する。これにより顧客企業の導入や運用保守の手間を大幅に削減する」。

 ハードウエアとしては、6コアのプロセッサを2個搭載したサーバーを1台のラックに最大30台、計360コアまで搭載できる。サーバーとストレージの入出力には、40Gビット/秒のInfiniBandを採用した。ラックは最大8台まで増設できる。「30台のサーバー間で負荷を分散でき、1台がダウンしてもすぐに処理を継続可能だ。処理能力は必要に応じて柔軟に追加できる」。

 エリソンCEOは続いて、次期アプリケーション製品群「Fusion Applications」についても言及した。「2005年にピープルソフトを買収して以来、多くのアプリケーション開発ベンダーを買収してきた。各々のベストな機能を組み合わせるという大変な作業を、やっと終えることができた」。

 Fusion Applicationsは「財務管理」「購買調達」「人材管理」など7種類、100以上のモジュールで構成する。買収によって手に入れたアプリケーション製品のコードは、すべてJavaで作り直したという。

 「Fusion Applicationsはクラウドレディだ。顧客企業が自社で運用するか、当社のデータセンターからパブリッククラウドとして利用するかは、顧客企業が決められる」と、エリソンCEOは強調した。Fusion Applicationsは、今年末から順次出荷する計画としている。

■変更履歴
公開当初、本文見出しで「エリソンCEOがクラウド感を披露」とあったのは、「エリソンCEOがクラウド観を披露」の誤りです。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。[2010/9/22 14:40]