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特集:OSSにかかわるエンジニアたち

第3回 「ドキュメント翻訳」によるOSSへの貢献――PHPの場合


高木正弘
2010/9/29


OSSプロジェクトに貢献するということは、なにもプログラムを書くことだけではない。「ドキュメントの翻訳」という形でも、OSSに貢献できるのだ。

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 オープンソース・ソフトウェア(以下、OSS)プロジェクトは、世界中に散らばる開発者の協力の下に成り立っています。やる気がある人なら誰でも自由に参加でき、自分の得意な分野でプロジェクトに貢献できるのが、OSSの世界です。

 ところで、OSSプロジェクトに貢献する方法は、ソフトウェアのプログラムを書くことだけではありません。それ以外にも、さまざまな方法でプロジェクトに貢献できるのです。マニュアルやWebサイトなどのドキュメントの「翻訳」も、その1つです。今回は、「ドキュメントの翻訳」を取り上げてみましょう。


PHPのマニュアル翻訳に5年間かかわる

 筆者は、PHPの開発者向けマニュアルの日本語訳を担当しています。パッチは書かず、ほぼ翻訳のみでPHPに貢献しています。翻訳の作業中に原文で間違いを見つけた場合は、原文を直接修正することもあります。

 筆者がドキュメントの翻訳に参加するようになったのは、5年ほど前にある日本語ドキュメントの誤訳を発見したことがきっかけでした。自分の出した修正案が認められてドキュメントが更新されたのに気をよくして、それ以降もいろいろな翻訳作業にかかわっていくようになりました。

 現在は主に、英語版のマニュアルの更新情報日本語訳の対応状況をチェックしつつ、日本語訳を常に最新の状態に保つ作業をしています。そのほか、バージョン管理システム「git」についての解説OSSプロジェクトの運営に関するドキュメントなどの日本語化にもかかわっています。

翻訳作業は「自分の役に立つ」

 筆者が翻訳作業を続けている理由は「それがみんなの役に立つから」「喜んでもらえるから」です……といいたいところですが、実はそうではありません。もちろん、上記の理由も動機の1つではあるのですが、それよりももっと大きな理由が「自分の役に立つから」なのです。いったいなぜ、翻訳することが自分の役に立つのでしょうか。

後で楽できる

 同じ内容のドキュメントを読む場合、英語で書かれているより日本語で書かれている方がずっと読みやすいものです。最初に一度翻訳しておけば、あとは日本語で読めるのですから、こんなに得することはありません。

理解を深められる

 「分かったつもり」と「実際に身に付いている」の間には大きな壁があります。自分では分かったつもりになっていても、いざそれを人に説明しようとすると、言葉に詰まってしまう。そんな経験はありませんか。

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 「外国語のドキュメントを翻訳する」ことは、「その内容を他人に日本語で説明する」ことによく似ています。他人に説明するには、中途半端に分かったつもりになっているだけではなく、内容をきちんと理解していなければなりません。

 翻訳をする際には、必然的に原文を何度も繰り返し読むことになります。筆者の場合は、

  • 全体像を把握するために1回

  • 日本語に訳していく段階で1回

  • 出来上がった翻訳を見直す段階で1回

と、少なくとも3回は原文を読み直します。その結果、「何となく流し読みして分かった気になってしまう」ことを避けられるのです。

OSSにおける翻訳の現状と課題

 先に挙げたようなメリットを感じながら、筆者はOSSのドキュメントの翻訳にかかわってきました。約5年間の作業を通じて感じたのは、次のような課題です。

原文の更新への対応遅れ

 紙の書籍として出版するドキュメントとは異なり、オンラインで公開しているドキュメントは頻繁に更新されます。原文と翻訳の内容がずれてしまうと翻訳の意味がなくなってしまうので、原文の更新に合わせて翻訳を更新します。これは非常に大切な作業です。……が、新しいドキュメントを最初から翻訳するのに比べると、既存の翻訳の更新は地味な作業です。ついつい後回しになってしまいがちです。

翻訳作業にかかわる人の不足

 OSSプロジェクトでドキュメントの整備を担当していらっしゃる方と話をすると、決まって「人がいないねえ」という話題になります。誰もが知っているような有名OSSプロジェクトであっても、ドキュメントの翻訳にかかわっているのは片手で足りるメンバーだけ、というのも珍しくありません。「翻訳をやってみたい」といえば、どのプロジェクトでも大歓迎されることでしょう。

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