診察インタビュー

お待ちかね、外科の主治医の診療の日。
なのに、何故か体がしんどい。
思っている以上に、放射線治療はしんどい(ようだ)。
夏バテじゃない、絶対。なぜなら。。。体を激しく動かしもせず、涼しいところにいるし。かと言ってオフィスのようなガンガンに冷房をいれているわけでもなく。
バリバリ働いているわけでもないし。

つか、若干太ってる気が…。
いかん。乳がんは太ると再発リスクがあるのに。
この機にモムチャン(韓国語で最高の体の造語)になる予定なのに!イカン!

お腹は若干出てきましたが、腕の浮腫は引いてきました。
腕の血栓性静脈炎は、アスピリンでマシに。でもなかなかコブが取れない。
それにアスピリンは常時摂取していると、血小板の力を抑える薬なので血が止まりにくくなってしまう。
止め時を教えてもらったけど、本当にやめていいのかわからず…。

あれやこれや聞きたいこといっぱいの状態で病院へ。


放射線治療は、正直毎日毎日照射してるだけで、放射線科の先生とも週に一度話すだけ。
一生懸命話を投げかけてるんだけど(笑)、先生は真面目な形でキチンとこたえてくれるだけで、楽しいきゃっきゃウフフな話にならない…。
※いい先生ですよ!

しかし放射線もあと2日。あと2日なのだ!
もう日焼けくっきり、真っ赤っか。辛うじて皮膚は乾燥している程度で、ケロイドには幸いなっていない。


そしてお待ちかね!外科診療の時間。
「こんにちは〜。あ、元気そう。」いつも顔を見ないで言う主治医!爆笑!突っ込んでほしいとしか思えない。

「先生〜、しんどいですよ〜」
「そうですか〜。思い込みじゃないですか?(笑)」
まあちょっとそいう感じのことは端折ってだな…

「胸がかなり焼けてて、痛いんですけど」
放射線の跡を見てもらった。
「これぐらいなら問題ないです。色素沈着も元に戻ります。」
「戻らないこともあるんですか?」
「リニアック(最近病院で導入した放射線治療機器。高額。しかし、この機器をいれたことで主治医は院内放射線治療を勧めるように。それまでは院外の腕のいい放射線科の先生にお願いしていた)ではそういうことはありません。過去の機器は良くなくて、どれだけ努力しても均一に照射することができなかった。なので皮膚に対する副作用が大きかった(主治医の話では、皮膚に多く照射してしまい、焼けてしまうような感じかな)」

「まああともうちょっとなんで、最後まで頑張ります。先生、最近桑田佳祐さんが食道癌になられましたが、その前にリニアックのニュースをして居て、食道がんの人が外科治療なしで治ったようなんですが、どうなんですか?(主治医は元々消化器系の外科だった)」
「ハッキリ言って、食道がんの手術はとても大変。肋骨を取ったりいろいろ時間がかかる。(内視鏡の場合はこれに当てはまらない)だから同じ効果であれば、僕なら放射線治療を勧めます。予後もいいし。」
外科手術よりも放射線治療の方が、当然術後回復がいいらしい。

「乳癌とは全然違うんですね。」
「乳癌とは全然違う!内臓を切るっていうのはとても大変。乳がんは体の外側にある部分(感覚的には筋肉とか皮膚とかと同じかな?)なので、僕は乳癌の手術は全然かわいそうに思わない。(おいおい(笑)でも実際そうみたいです。)むしろ恨まれてもいいから抗癌剤は受けてほしい。そう思っています。」

「でも先生、女性としては胸を切るのは相当怖いし嫌なことです。切らずに例えば放射線治療のみで完治するならそのほうがいいのですが」
「それは癌の悪性度がや進行度によります。例えば最初に生検(針で癌と思われる組織を抜き取り、癌かどうか病理診断する)で、5mmでもリンパ管に浸潤しているとしたら、それは切り取る判断を下します。非浸潤がん(進行癌ではない癌)なら放射線治療のみでも可能かもしれませんが、どちらにしても標準治療ではありません。標準治療でなければ、それはデータがわからない不確実な治療ということです。また、乳癌のケースは手術して初めて癌かどうかわかります。
手術は除去も目的ですが、その後の治療方針を決める材料でもある。むしろそちら(抗がん剤やホルモン療法)のほうが大事。他の胃がんや大腸癌は、検査(糖などで癌があれば反応する検査方法)でものすごく反応します。子宮頸がんは若干かな。乳癌の場合は反応しません。先ほどの食道がん放射線治療のみ、というのが実現できるのは、検査や癌の診断確定が違うからなんです。」

「ちなみに、私の癌のステージってどうだったんですか?」
「センチネルリンパ管に2つ、血管にも浸潤してたのでステージ3A(A:前期、B:後期)ですね。」
「思ってるより進行してましたね(笑)」

「部位により治療が違うのはわかりました。最近、私の伯父が胃がんに、叔母が肝臓がんで亡くなったのですが、胃癌の伯父は抗癌剤治療は行わないらしいのですが、これはなぜですか? 」
「胃癌には有効な抗がん剤がないというのが一つあります。胃癌は日本人に一番多い癌で、海外から研修にくるほどです。手術は実績がいいのですが、抗癌剤は日本に開発する資金がなく(抗癌剤開発には莫大なお金がかかる。また、医師や薬剤師のなかでも超のつく優秀な人材が必要らしい)実際開発するのが難しい。だから抗癌剤治療をあまりやらないのです」

「先生、伯父や親戚は抗癌剤治療がなくてよかったといっていますが、今となっては私は抗癌剤を受けてよかったと思っています。転移や再発の怖さがありますから。そこらへんはどうなんでしょうか?」
「そうです。癌治療は抗癌剤がすべてと言っていい。実際あまのさんのステージ3は、有効な抗癌剤が無い時代なら『うわっ』と思うステージです。しかし今は本当にやめていい抗癌剤がありますから、全然予後が違います。」

「わたしの受けたFEC・DOC(フェック・ドセ)は約5年まえに一般に使われ出したと聞きましたが、5年生存している人がいないということでしょうか?」
「5年前に出ましたが、それ以前からずっと試験をしているわけで、5年以上生存している人がいます。(多分治験された人のことだと思う。これ以上は聞けなかったから)」

「知り合いが子宮頸癌で、放射線治療を行っているのですが、 体調が悪く食事もできない状態でした。ですが免疫療法をして体調が戻ってきているようです。先生は免疫療法をしてどう思われますか?」
「夢のような技術ですが、今の免疫療法では体調がよくなることはありません。
例えば、結核ワクチンがありますよね。大抵の人がBCGを売っている。でも結核にはなる事もある。
それで結核の免疫療法をするでしょうか?大抵の医師は勧めません。効果が無い事を知っているから。
おそらく元気になったのはプラシーボ効果(偽薬効果。自己催眠など思い込みでよくなる事を指す)か、ステロイドなどを使用しているかもしれません。」
「これからの研究によるんですね。」

「先生、わたし最初はどこの病院を選ぶかが患者に取って大きな事かと思っていましたが、どの先生を選ぶかで患者の運命が大きく左右されるんじゃないか、と思えてきました。例えば、 わたしの抗癌剤はきつかったですが、減らしたりすると再発率が格段に高くなるんですよね?そういう判断は医師がするんですよね?」
「そうです。かなり医師によります。病院の施設ではない。どんな抗癌剤を使うか、データを知っているか、これが大きいのです。また、患者さんの理解があるかどうかでも違います。あまのさんの抗癌剤はかなりきつい。死ぬかと思ったでしょう?でも今のところ死亡率ゼロです。ヨーロッパで使われている抗癌剤のなかには、死亡率の高いものもある。日本でも認証されていますが、死亡率の高いものを、他に効果が高いものがあるのに使ったりしません。」

「何だかんだ言っても、やはり標準治療が大切なんです。標準というと、普通、最低限、という風に聞こえますが、そうじゃない。キチンと実証された治療方針なんです。これを守らなければ効果は見込めません」

ずいぶんお話ししたが、
本当にわたしの運命はこの目の前の主治医が握っていたんだな、と実感した。
家族はわたしが抗癌剤を受ける時はとても反対した。
民間療法に頼る気持ちもわかる。
しかし、やはり直接医師とはなし、癌に対する理解、スケジュールを把握する事が、患者に取ってはとても大事なのを痛感した。

キチンとデータを把握し、患者に向き合ってくれる医師を見つける事。標準治療をしっかり守ってくれる。
これはある種掛けに近いものがある。

わたしがあんまりにもしゃべるから、
「次の外来は1カ月後にしようかな…」と主治医がいいだした!
「それは困ります!2週間後で!!」と慌てて予約を入れた。

あんまり主治医を独占してはいけないな。
他にもたくさんまってる患者さんがいるから。


それにしても、楽しかったです(笑)