とうとう家畜改良事業団(高鍋町)まで拡大した。ここは、県内の種雄牛(種牛)を一括管理・飼養しているところである。いわば、本県畜産(肉用牛)の心臓部である。

 ここで生産された雄牛の精液が県内各地の母牛に配分され、多くの子牛が生産される。その子牛は、県外(松阪・神戸・佐賀等)にも出荷される。

 ここは、特例中の特例として、先月27日から細心の注意を払い、出来うる限りの徹底的な防疫対策を講じて来た。なのに・・・・・・・


 事業団にいる種牛49頭と肉用牛259頭は殺処分である(因みにエース級6頭は、既に分離管理されている)。特に、種牛の品種改良や飼養・育成には膨大な時間とコスト、関係各位の努力と苦労が費やされてきた。それが、一瞬にして無になる。その無念・失望・絶望は如何ばかりか。

 もう一つ、重要なのは、場所が川南町から高鍋町にジワリと南下して来たということだ。


 感染経路・感染源の究明が急がれる。しかし、感染経路の究明というのは、ある意味、農家や関係者を疑うということである。関係者や出入りの業者の足取りや生活行動の捜査、当事者の事情聴取や目撃者捜し・・・・・・・・当然難航する。

 専門家に話を聞くと、場合によるとデイサービスのお迎えまで追いかけるし、泣かれる農家のおじいちゃん・おばあちゃんをそれ以上追求することは出来ないという。


 専門家によると、獣医師や保定作業員、各職員や自衛隊等、現場で防疫作業に従事されておられる全ての方々、現場に出入りしている関係者含め、どんなに消毒や殺菌を徹底しても全く汚染されていないヒトはいないと言う。つまり、家畜からヒトへ、ヒトからヒトへの交差感染や接触感染を全く封じ込めるのは最早不可能と言わざるを得ないということだ。誰しもキャリアということだ。

 他に、小動物、虫、鳥、ヒト、車、物資、風で飛ばされた乾いた糞尿、空気、土、地下水、雨等・・・・・・・・感染源や感染経路の究明は困難を極める。


 ウィルスは日に日に確実に繁殖・増殖し、濃度や強度を増し、もしかすると変異しているかも知れない。一瞬、農業テロなどという言葉も脳裏を過ぎる。


 殺処分は法律上、専門家(主に獣医師)がやらなければならない。電気、心臓注射、炭酸ガス等の方法がある。獣医師さんの中でも、特に大型家畜の扱いに慣れた方々しか出来ない。人員不足というのは、特にそういう獣医師さんや保定作業員の方々が足りないということである。

 殺処分する前に、後の補償のための一頭一頭の算定評価をしなければならないし、一日何百頭・何千頭という殺処分は、係員に精神的にも肉体的にもかなりの負荷・苦痛を強いる。殺処分される農家の方々の心中も察するに余りある。また、豚舎等作業所は比較的狭く、数名の専門員しか一度に入れない所もある。とにかく、平易な作業ではない。中々スムースに行かない理由がこういう点にもある。


 埋却地確保も追いつかない。埋却地は、法に基づく指針では、基本的に発生農場かその隣接地である。しかし、土地の選定と共に、土地の借用・購入、地主や近隣住民・農家等の同意が必要で、手続き等も含め簡単ではない。

 選定地が決まると、掘削し、地下水や岩盤等の有無を調べる。もしあった場合には、そこは諦め、また最初から選定に入る。気の遠くなるような膨大な作業である。

 とにかく、発生・確認の規模やスピードに殺処分や埋却が追いつかない。


 本日までに新たな判明は10例。殺処分対象は2045頭。発生は、川南町と高鍋町。これまでの累計は101例、殺処分対象は82,411頭。

 本日までに殺処分が完了した家畜(牛・豚)は、49,198頭。