思春期という甘酸っぱくも過酷な時代を体験した人なら、誰しも「ギターを弾けるようになりたい。そして異性にモテモテになりたい!」と、一度くらいは切実に願ったことがあるのではないでしょうか?

ギターが弾けるようになり、モテモテになる自分を妄想しながら、お小遣いを握りしめて向かった近所の楽器屋で、ビジュアル系バンドをやってそうな店員のお兄さんに薦められるがまま、お手頃価格のアコースティックギターなるものを買ってみたはいいけれど、主にFのコードが弾けなかったことが原因で、それ以後ギターは押し入れの中で長い眠りに...。家賃は払ってくれないくせに割と大きめのスペースを占拠し、沈黙を守りながらホコリを集める作業に没頭するギター。

いつしか、自分は世間から見たら大人と呼ばれる歳になり、あの頃の気持ちなんてどこへやら。だがしかし、嬉し恥ずかしながらも、やはりもう一度ギターに挑戦してみたい、と思っている方のために、ギターが弾けるようになるための必勝ガイドを、今回はご紹介しちゃいます。

とりあえず押し入れからギターを取り出し、ホコリを拭いてやってから、下記の手順を実行に移してみて下さい!

 

1. デジタルチューナーを買う

初心者が行き詰まる最初の難関が「チューニングが合わない」という至極現実的かつ、切実な問題です。チューニングが合わないギターを奏でても、良い音は出ません。心地良い音が出ないと、自分にはギターは向いていないだとか、才能がないだとか、ついつい自分を責めてしまいがちですが、チューニングが合わないのはあなたのせいではありません。三味線奏者の方たちは、伝統的に耳を頼りに調弦をするそうですが、現代を生きる我々はそのしきたりに従う必要はないのです。

今の時代には「デジタルチューナー」というものがあります。デジタルチューナーは音の周波数を読み取り、音が高い、低い、ちょうど良いなどをメーター表示で教えてくれる画期的なツールです。それに比べ、音叉やチューニング用の笛などは正しい音を一応教えてはくれるのですが、自分が弾いている音が正しいのかどうかは判断してくれないので、初心者には不向き。楽器屋さん、もしくはネットでデジタルチューナーを購入し、それを頼りにチューニングし、チューニングが合ってからでも、自分に才能があるかどうかを決めるには遅くありません。

チューナーの使い方が分からなければ、ネットではなく楽器屋に出向いてチューナーを購入し、自分の疑問の全てが解決するまでお店の人に聞きまくることをオススメします。ネットにも、ギター教室系の動画がたくさん出回っているので、一度見ておくと分かりやすいです。

KORG AW-2G クリップ式チューナー』あたりが、最近ではプロアマ問わず定番なので、ぜひ検討してみて下さい! また、『TunerTool』などiPhoneアプリで無料のものもあり、有料の『GuitarToolKit』はかなり優秀ですが、アプリはあくまで補足的なものとして、ちゃんとしったチューナーを一つ持っておくことをお勧めします。弾く前に必ずチューニングする習慣を付けておくと、チューニングが合っていない時に「ん? なんかおかしいぞ?」と感じられるようになります。これは、ヒアリング能力が上がっている証拠であり、ミュージシャンとしてのレベルアップを意味します。


2. ギターはケースに入れない

ギターを弾けるようになるには、ギターを弾くこと。そして、ギターはケースに入ったままでは弾けません。それは押尾コータローさんのようなギターの名手でも、初心者でも同じことです。特に初心者の場合は、とにもかくにもギターに触れることが大切になります。そうなってくると、毎回弾き終わったらギターをケースにしまう、というのはナンセンスです。部屋にいる間、いつでも気軽に触れるように、常にケースから出しておきましょう。むしろ、ケースは押し入れかどこかにしまってしまうと良いかも知れません。


3. ギターは出来るだけ邪魔になる場所に置く

ケースから取り出し、むき出しのギターを置く場所というのは結構気を使うものですが、置いていても倒れない場所で、できるだけ生活の邪魔になる場所が良いでしょう。ギタースタンドがない場合は、ベッドの上やソファの上あたりに寝かせておくと良いかもしれません。ソファに座ってテレビを見る場合にも、とりあえずはしばらくギターを抱えてみる、などを意識的にしてみて下さい。むしろ、ギターを抱えてソファに座ったら、テレビを見るのはやめてその時間をギターを弾くことに費やすのが、ギターを弾けるようになるという目的においてはベストな考えではないかと思います。テレビを見る前に一つコードを弾いておく、というだけでも0か1かの違いを生み出します。1回弾いてみるというのは0回よりも無限大倍偉いのです。


4. 弾かなくてもいいので、とにかく一日一度は抱えること

夜遅く帰宅した時にギターを奏でる行為は、近所の人にしてみれば迷惑行為以外の何者でもありません。しかし、弾かないにしても一日一度はひざの上におき、抱えてみるくらいの心構えが、ギターを弾く習慣をなくさないためには大切です。

ペットにエサをやるとか、恋人にメールするだとかと同じ感じで、とにかく日々のコミュニケーションを図ることを心がけましょう。キャプテン翼的精神論ですが、ギタリストにとってギターは友達であり、家族であり、恋人でもあります。ギターを始める事を決意したあなたは、その時点で立派なギタリストなのです。


5. 勉強だと思わないこと

ギターが弾けるようになるのに必要なのは、必ずしも勉強ではありません。練習とか勉強というと、何か新しいことを本を見て学んだり、悩んだり、苦しんだりなんだりする固い印象があります。しかし、ギターが弾けるようになるのに必要なのは、できるだけギターに触れて、自分とギターとの距離を縮めてあげることです

ギターとの距離が近づけば近づくほど、それは必ず音になって自分にかえってきます。教則本などが何もない状態で弾いてみて、新しいコードが知りたくなったら、新しいコードを調べてみてください。無理して新しいことを詰め込む必要はありません。極端な話、ギターを弾く真似だけでも、ギターに触れているのであれば、それだけでも意味のある行為です。音楽とは読んで字のごとく音を楽しむものなので、楽しみながらやることが何よりも大切です。その中で「どうやったら楽しいか」というのを、自分なりに発見していくことが継続の上でのキーとなってきます。


6. ギターを弾ける人と友達になること

ギターが弾ける人は、ギターの話をするのが基本的に好きです。ギターが弾ける人とたくさん話をし、ギターについて話すこともギターの練習の一つ。話をする際に、「今度教えて下さいよ」という抽象的な内容よりも「初めて弾けるようになった曲はなんでしたか?」など、具体的な質問をすると、ためになる話が引き出しやすいようです。

また、こういった会話は音楽的なボキャブラリーを増やすきっかけにもなりますし、練習している曲を報告したりすることにより、モチベーションの維持にも繋がります。上手くいけば、一緒にセッションしたりなどもできるかもしれません。人と一緒に演奏するというのは、音楽をやる上での醍醐味の一つです。


7. 出かける時にできるだけギターを持ち歩くこと

ギターを持って電車に乗る、自転車に乗る、歩く、飛行機に乗るなども、ギターの練習のうちです。ピクニックに行く際やホームパーティー、旅行などに持って行くと、まだ自分が人前で披露するほど上達していなくても、実はちょっとギターが弾ける人というのは驚くほど沢山いるので、そういう人たちとの会話のネタになります。人間関係の潤滑油としてもギターは活躍してくれるわけです。さらに、ギターを持ち歩くことによって、前述した「ギターを弾く友達」が見つかりやすくなります。

その場に居た人が何か演奏してくれちというのもよくある話で、その人が弾ける曲を教えてもらったり、つまずいている部分の相談に乗ってもらったりなど、会話もギターがあると自然な流れで生まれやすいです。それに。ギターをどうやって持ち運ぶべきか、どこに置いたらいいのかなどは、理屈ではなく繰り返しやってみて身体で覚えるものなので、機会を見つけてできるだけ一緒に外出してみて下さい。

ハードケースを持ち歩くのは結構ハードルが高いので、ハードケースしかない方は、ソフトケースの購入を検討すると良いかもしれません。僕の場合、旅用のギターというのを持っているので、近場であればケースに入れずに持ち運ぶ場合も多々あります。飛行機に乗せる場合、対応は航空会社によってまちまちなのですが、最近は機内持ち込みをさせてくれないことが多いです。また、持ち歩くと他人が自分のギターを弾いたり、自分の目を離れてしまう場面があって傷ついてしまうこともありますが、ギターが弾けるようになるためには、ある程度の犠牲は必要だと、割り切って考えることも必要。楽器を大事にするのも大切ですが、ぶっちゃけ10万円以下のギターは消耗品です。多くの人に弾かれ、傷ついていくギターの方が、押し入れで眠り続けるよりもギターとしては本望なのではないでしょうか?


8. ギターの弦を二ヶ月に一度は必ず変えること

ギターの弦を張り替えるのは時間もコストもかかる作業ですが、この行為もギターを運ぶのと同様に、ギターと自分の距離を縮めてくれる訓練の一つです。どのくらいの時間ギターを弾いて過ごすのかにもよりけりですが、最低でも二ヶ月に一度は弦は新調しましょう。新しい靴を買うと外出したくなるように、弦が新しくなることにより、いつもよりギターを弾きたくなるという、相乗効果もあります。

弦の張り方も、繰り返しやってみて少しずつ要領を得てくるものです。前回気付いたことなどを次に活かせるようにする意味でも、初心者の頃は割と頻繁に変えてみた方が良いと思います。前回の弦の張り替えから三ヶ月以上ともなると、もっとこうしたらいいじゃないか! と前回気付いた事は、記憶からきれいに削除されてしまっている可能性が高いです。

弦の張り方が分からない方は、この辺りの動画(その1その2その3)を参考にしてみて下さい。ギター歴が割と長い人でも意外にちゃんと知らなかったりもするので、ギターがある程度弾ける方でも新しい発見があるかもです。

弦は何セットか常備しておくと「弦が切れているので今日は弾けない」という、上達の妨げとなる状況も回避できるので、買い置きしておくと安心です。備えあれば憂いなしという気持ちの問題だけでなく、セットで買うと若干割安になったりもします。弦を替えるついでに、ギターのボディを簡単に掃除してやると一石二鳥です!

弦もよく見るといろんな種類があるので、自分が弾きやすいと思うものを見つけるためにも、色々試してみて下さい。基本ルールとして、初心者の方であればライトゲージと呼ばれる細めの弦が、押さえやすいのでオススメです。しかし、細い分切れやすく、演奏した時の音量が小さいという弱点もあります。


9. うまくなっているかどうかで悩まない

ギター歴というのは始めてから何年というよりは、今まで何時間ギターに触っていたかの累積時間でしかありません。ギターを弾き続けている以上、なかなか練習の成果が目に見えて表れないことはあっても、下手になることは絶対にありません。悩むことは時として「やめたい」という欲望に形を変化させてしまいます。これを避けるためにも、いちいち悩まないことが吉です。弾いている限りは上達しています! ただし、これは裏を返すと、弾かないと絶対に上手くならない、ということでもあります。悩んでる時間があったら、一回でも多くFのコードを弾いてみる、という方が健全かつ実用的です。


10. 自分より上手い人を見てもへこまない

ギターはポピュラーな楽器なので、ギターが上手い人はものすごくたくさんいます。自分と比較して自信をなくすよりも、上手い人の演奏を聞く機会があれば、どんなピックを使っているのか? ピックの持ち方は? Gのコードをどうやって押さえているか? など、一つで良いので注意して見てみて下さい。そして、それを覚えて帰って、実際に自分でも試してみて下さい。ギタリストはたくさんいますが、誰一人として同じ弾き方をする人はいません。芸は真似ることから始まるものなので、真似る対象はむしろ多い方が良いかと思います。それを繰り返すことにより、自分の弾き方というものがだんだん身に付いて来るはずです。


11. モテたいという気持ちを忘れないこと

かのエリック・クラプトン氏も「女にもてたい」という、不純ながらも人を動かす力がありまくりな、このシンプルな動機によって偉大なギタリストになっていったそうです。ギターの上手さというのは、その人がどのくらいモテたいのかという願望を形として示してくれている、と言っても過言ではないかと思います。

モテたい気持ちを後ろめたく思う必要は全くありません。こういう単純なモチベーションが起爆剤となった方が、むしろ結果に結びつきやすいのです。モテたいという気持ちは大切にして下さい。そして乱暴な理論かも知れませんが、その事実を誇りに思ってみて下さい!

もちろん、これはモテたいという願望に限った話ではなく、どうしてギターが弾きたいと思ったのかという「初心を忘れない」ことが大切である、と理解して頂ければ幸いです。


12. なにがなんでもやめないこと

ギタリストでいるための唯一の条件は、ギターを弾く事です。ギターを弾く人がギタリストで、弾けるけど弾かないという人はギタリストではありません。継続は力なりというやつですが、ギターを弾けるようになりたいと思って始めたのなら、なにがなんでもやめないことです。やめなければ絶対にいつかは弾けるようになります。弾けるようにならないたった一つの原因は、あきらめてやめてしまうことです。

なかなか簡単に上達しないからこそ、上手くなった時に価値があるものだ、と割り切って気楽に構えて続けてみて下さい。きっとギターを弾くことによって思いもよらない扉が開けたり、今まで接点のなかった種類の人と繋がれたり、音楽がより一層好きになったりと、ギターを弾く行為以外の部分でも、人生がより豊かな体験となるはずです。


一生懸命やりすぎて短期間で挫折するよりも、ちょっとずつでも、ダラダラとでも、いい加減にでも良いので、なにがなんでもやめない気持ちで挑戦してみて下さい!

「走った距離は裏切らない」という名言を、アテネ五輪金メダリストの野口みずき選手が言っていますが、それはギターも同じで、ギターを弾いて過ごした時間は、必ずなんらかの形で自分の財産となってかえってきます。しつこくやり続けてみて下さい。

と、ここまで書いておいて難ですが、ギターが弾けるからと言って、それほどモテるものではないというのが現実です...という哀しい事実も最後に付け加えておきます...(笑)。

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(まいるす・ゑびす)