パソコンが遅い! できる事はとりあえずやってみたけど、まだまだ遅い! といった場合、「OSの再インストール」は常に選択肢としてあります。ですが、一口にOSを再インストールといっても、一体どうやってやるの? という方のために今回は、再インストールの手順、コツ、最も効率的なやり方などを、詳しく説明してみたいと思います。

再インストールを迫られるまでのシナリオは数多く考えられます。過程がどうあれ、再インストールの手順は同じであり、それが最善策であることも多いです。ただし、間違えるとデータが消えてしまう危険性もあるので、十分注意して作業して下さい。やり方は多種多様ありますが、今回は時間効率的に優れた方法を紹介していきます。

 手順1: ハードディスクのクローンを作成

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まずはデータのバックアップが必要です。バックアップをオンラインで行っている方、Dropboxに必要なものを保存したり、AppleのTime Machineなどのソフトを使ったり、その他のやり方でファイルをバックアップしている方も、ハードディスクを完全消去するにはまだ準備が不十分です。例えバックアップしてあっても、複数の場所に散り散りになっている場合、再インストール後にそれらを探し出す作業が発生してしまいます

この手間を省くためには、既存ドライブのクローン作成が確実かつ最良の方法です。クローンを作成しておけば、もし何らかの理由で再インストールが失敗に終わっても、前の状態には復元できるので、以前と同じ状態でパソコンを使えます。つまり、今よりひどくなることは決してありません。また、再インストール後にファイルを選択し、ハードディスクへ保存していく作業をする際に、ファイルが一カ所にまとまっているのもかなり便利です。

バックアップドライブでのファイルの場所は、パソコンのハードドライブとほぼ同じになっているので、前の状態に戻す事も容易にできます。しかも、ハードディスクのクローン作成は一度設定さえしてしまえば待っているだけでいいので、特に手間がかかるわけでもありません。必要となるのは、今使っているクローンを作成しようとしているハードディスク以上の容量を持つ外付けハードディスクと、クローン作成ソフトウェア、そして、パソコンを使わないで数時間過ごす心構えです。ここから先は、OSごとに説明を分けて行います。

Windows

Windowsドライブのクローン作成にはいくつかオプションがあるのですが、今回は中でも優秀な2つの選択肢に絞って紹介します。まずは『Easeus Disk Copy』。ブートCDから起動し、ハードディスクのクローン作成を高速で行ってくれるツールです。Mac OS XやLinuxでも実は使えます。

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ブートCDなしでWindowsドライブをクローンしたい場合、『DriveImage XML』が便利です。ディスクイメージを他のドライブへ保存(単純にクローン作成というわけではなく)、というオプションもあるのですが、どのみちデータを別ドライブへ保存する必要があるので、ディスクイメージよりはクローンを作成する方が、この場合は理にかなっているかと思います。一方で、クローンからブートできないのは問題でなく、既存の外付けハードディスクの空き容量を使ってホストさせたい場合であれば、イメージとして保存するのも良いかと思います。個人的には別ドライブに保存し、定期的にクローンを更新してバックアップを取る方法がベストかと思いますが、必要に応じて方法を選択して下さい。


Mac OS X

OS X用のドライブクローン作成ツールでオススメなのは『Carbon Copy Cloner』。フリーツールであり、クローン作成にはこのツールが一番快適です。またバックアップソフトとしても使え、ブータブルドライブの作成も可能なので、Macユーザの方は、これ一つあればとりあえずは問題ありません。

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ソフトウェアの使い方もとてもシンプル。ソースドライブ(内蔵ハードドライブ)とターゲットドライブ(バックアップドライブ)を選択して、クローンボタンをポチッと押すだけ。途中で停止もできます。再開するときは、ターゲットドライブをスキャンすればOKです。Carbon Copy Clonerには他にも機能があるのですが、シンプルなクローン作成だけでも十分に使えるツールだと思います。ドライブのクローン作成を開始する前には、全ての設定をちゃんと確認して下さい。特にソースドライブとターゲットドライブを逆に設定してしまうと、バックアップしたいデータが消されてしまうので、注意が必要です。そんな凡ミスなかなかやらんだろと思いがちですが、時に人はケアレスミスをするものです。必ず確認を!


Linux

Linux向けには『Clonezilla』がおすすめのオプションで、これは2タイプあるのですが、今回は『Clonezilla Live』を使います。CD、DVD、USBフラッシュドライブからアプリケーションを起動できます。

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Clonezilla Liveには、内蔵ドライブのクローンを外付けドライブに作成するというオプションがあるのですが、ネットワークドライブへもバックアップが取れます。また、下記のようなコマンドラインでddコマンドを使うことも可能です。

dd if=/dev/sda of=/dev/sdb

この場合、「/dev/sda」のコンテンツを「/dev/sdb」へコピーします。もしこれを行う場合、下記の点に注意して下さい。

  1. 間違ったディスクを上書きしてしまわないように注意する
  2. ddコマンドの実行にはルート起動が必要


この実行にはちょっと時間がかかるので、もう一台パソコンを持っている方は、再インストールしたいソフトを今のうちにダウンロードしておくと良いかと思います。Windowsを使っている方であれば、「Ninite」は一部のフリーウェアアプリへのショートカットを提供してくれるので、とても便利です。また、米Lifehacker編集部のお気に入りを集めたライフハッカーパック(Windows用/Mac用/Linux用)もありますので、気になった方はチェックしてみて下さい。

フリーツール以外にも『Adobe Photoshop』など、インストールするだけでもややこしいアプリもあると思います。これらを事前にダウンロードしておき、フラッシュメモリや外付けハードドライブに保存しておくと、再インストールの時間を短縮させることが可能です。

手順2: データをゼロアウトする

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クローンされたバックアップを作成したら、内蔵ドライブのデータを削除します。削除というと語弊があるのですが、クイックフォーマットを行うと、ドライブは全てのセクターが書き込み可能な認識状態になります。つまり、この状態から書き込みを行った場合、代替可能とされたファイルが上書きされます。このタイミングで初めて、上書きされた部分のファイルのデータが置き換えられます。これは、ファイルフラグメントがそこら中をうようよしている状態を意味し、さほどドライブのパフォーマンスに影響はないものの、多少の関連性はあります。

ドライブを全て0で埋めてみると、ドライブの悪いセクターを認識でき、その部分が使用されるのを防げます。コンピューターを本当にリフレッシュさせたいのであれば、ドライブの全てのデータをゼロアウトしておくと良いでしょう(ドライブ上の全てのデータは、1か0かのデータとして格納されているのですが、ゼロアウトとハードドライブを一度完全にリセットする感じです)。

ゼロアウトはクイックフォーマットと同じ要領なのですが、ハードドライブの全てのブロックにゼロを書き込むところが異なります。セキュリティ面を強化したいのであれば、この手順を何度か実行しておきます。データを安全に消去することよりも、ディスクセクターの不良部分の認識や、ディスクフラグメンテーションを整理することが今回は重要なので、それほど気合いを入れて繰り返す必要はありません。この作業は、256GB SSDで30分〜35分くらいかかりました。普通のハードディスクでは、さらにもう少し時間がかかるかと思います。いずれにしても、設定したら後は待つだけなので、出かける前などにやっておくと良いかと思います。では、ゼロアウトはどうやって実行すれば良いのでしょうか? これはOSによって異なるので、ここでも個別に説明していきます。

Windows

外部ベンダーによるオプションも数多くありますが、通常、ドライブのメーカーからフリーツールをダウンロードできます。HitachiSeagate/MaxtorWestern Digitalなどのメーカーは、ハードディスクのゼロアウト用ツールを無料で提供。Windowsで使えるオプションをもっと知りたい方は、Gizmodoの「ハードディスクもSSDもUSBメモリも、データを徹底消去!」をチェックしてみて下さい。


Mac OS X

Mac OS Xでは、ディスクユティリティから実行可能です。恐らく、実行時にはOS XインストールDVDから起動しているかと思いますが、見た目はどちらにしても同じです。まず、内蔵ハードドライブを選択し、消去タブを選択。

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そこからセキュリティオプションのボタンをクリックし、下記ポップアップが表示されるのを待ちます。

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「データを消去しない」が既に選択されているかと思います。このオプションを選択しておくと、ディスクのフォーマットが実行された後も、データは上書き可能な領域となるだけなので、データ自体はまだ存在し、ディスクリカバリツールなどで簡単に復元できる状態です。今回は、これ以外のオプションを選択します。ゼロアウトデータが最速オプションですが、セキュリティ強化のために長時間かかっても構わない方は、「7-pass」または「35-pass」の消去操作を選択して下さい。選択できたらOKをクリックし、メインウィンドウに戻った後、消去ボタンをクリックします。


Linux

Linuxでハードドライブをゼロアウトする最も簡単な方法は、コマンドラインで「dd」を使用すること。ドライブのクローン作成と同様、下記のコマンドを入力すると、ドライブのゼロアウトが実行されます。

dd if=/dev/zero of=/dev/hda

この例では「/dev/hda」がゼロアウトされます。ゼロアウトしたいドライブへのパスを特定する必要があるので、上のコマンドラインの単純なコピペはしないで下さい! コマンドラインの実行にはルート起動が必要ですが、簡単に間違ったドライブへゼロアウトできてしまうので、十分注意して行って下さい!


手順3: オペレーティングシステムの再インストール

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システムの再インストールの手順自体は単純ですが、ここで何をパソコンに入れて、何を入れないでおくかについて考える必要があります。Mac OS Xの場合、不要なプリントドライバや言語翻訳などがついてきます。OS X 10.6では、大部分が解決されたのですが、『Rosetta』や『QuickTime 7』なども削除されているので、これらが必要な方は、個別にインストールしていく必要があります。

Windowsでは、Windowsの一部でないものがインストールされていないかどうか、注意する必要があります。デスクトップやノートパソコンに付属しているシステムインストールディスクを使うと、Windowsとは直接関係のない不要なソフトが、勝手にインストールされてしまう場合があります。インストールしない選択肢がない場合、次のステップですぐにアンインストールしてしまいましょう。このプロセスは『PC Decrapifier」というツールを使うと、驚くほど簡単にできます。

Linuxでは、どのディストリビューションにするのかを自分で選択できので、こういった問題には直面しないと思います。

手順4: 個人データの復元

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このプロセスは一番時間のかかる部分であり、もっとも個人にとって必要な部分であると言えます。どこまでやるかは自分次第ですが、注意点が2つほど。

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まず一つ目。内蔵ハードドライブへ古いデータをそのまま突っ込むのはやめましょう。せっかくインストールし直したところで、昔のデータをそのまま入れてしまうと台無しです。なので、一つずつファイルを確認し、必要なものはキープし、不要なものは捨てる、という大掃除的なプロセスを踏みましょう。写真や音楽、動画、テキストなどの個人ファイルは、特に何も関連づけされておらず、ただただ単純にディスク容量を取るだけですが、それ以外のOSによって使用されるファイルをここでは見ておきます。これらのファイルの復元は、バックアップから選択してコピーするだけなので、さほど時間はかかりません。

Mac OS Xユーザの方で『Migration Assistant』を使おう、と思っている方がいたら、ここは一つ思いとどまって下さい! Migration Assitantは、アップグレードの際にはとても便利なのですが、システムを以前と同じ状態に復元するので、最初からやり直すというメリットは全て塗りつぶされてしまいます。

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システムファイルをそれぞれの場所に配置できたら、アプリケーションのインストールを開始します。OSや使用するアプリにもよるので、いくつかのアプリをコピーして、はい終了、という場合もあるかと思いますが、多くの場合、そうは問屋が卸さないのが現実です。たくさんのアプリを一から再インストールする行為を、地味に実行していく必要があります。

アプリケーションの再インストールに関して言えば、バックアップはあまり役立つものではありませんが、少なくともインストールするべきアプリのリストとしては活用できます。NiniteやWindows用のライフハッカーパックを使っている方は、フリーソフトウェアの一部の自動インストールが可能です。使用フラットフォームを問わず、フラッシュメモリや、外付けハードドライブにあらかじめインストールしたいアプリを入れておくと、大幅に時間の短縮が図れます

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その他のパーソナルファイルに関しては、何を内蔵ドライブに入れるか・入れないかの心配をする必要はありません。システムとは関連がないので、パフォーマンス自体には特に影響を及ぼさないからです。とはいえ、掃除をするには良い機会なので、必要なものを選りすぐってコピーしていくと良いかと思います。ハードディスククローンを作成する最大のメリットは、必要だったファイルを万が一忘れていても、後で戻って取り戻せる、というところにあります。数日経って、必要なファイルが全て揃う頃にはパソコンのパフォーマンスも向上し、快適な状態になっているのではないでしょうか?

というわけで、初心者でもできるOSの再インストール方法の手順をご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか? 記事で紹介されていなかったことに関する補足などは、コメントでどうぞ!

Adam Dachis (原文/訳:まいるす・ゑびす)