「Microsoftは他社と比べて1世代後ろをいっている」「HTML 5のサポートで、ビデオをWebの世界の第1級市民にする」――米Mozilla CorporationのエバンジェリストAsa Dotzler氏が“Open Video”の今後について語った。
セットアップしたてのPCでYouTubeを見ようとすると、ブラウザにFlash Playerをインストールしなければならないことに気付く。だが、今後はこうしたプラグインなしにブラウザ上で動画の再生が可能になるという。
Mozilla Japanは6月1日、プレス向けディスカッションを開催し、商用のアドインやコーデックに依存しないOpen Videoについて、米Mozilla CorporationのAsa Dotzler(エイサ・ドッツラー)氏が解説した。
「WebにおけるOpen Videoには2つの側面がある」(ドッツラー氏)。1つは次世代HTML標準であるHTML 5で、videoタグ(およびaudioタグ)が追加されることだ。videoタグとaudioタグを使ってWebページに埋め込まれたビデオは、Flash Playerなどの外部プラグインをインストールすることなく閲覧できる。
「Firefox 3.5の新機能の中で最もエキサイティングなのは、videoタグとaudioタグをサポートする点だ」。videoタグはJavaScriptと組み合わせることで、再生中のビデオをブラウザ上で回転させるといった表現も可能になる。
「Firefox 3.5のリリースによって、ビデオはWebの世界において“First-class citizen:第1級市民”になるだろう。プラグイン・プリズン(プラグインの刑務所)からも解放される。同時に、これまで制約が課されてきた何万もの開発者のクリエイティビティとスキルを解き放つんだ」
HTML 5をサポートするブラウザは、何もFirefoxだけではない。Google ChromeやSafari、Operaも、HTML 5で新たに追加されるvideoタグやcanvasタグへの対応を発表し、β版などでは一部実装もしている。ただし、Webブラウザの世界で最も大きなシェアを持つInternet Explorer(IE)は、いまだにvideoタグの実装には至っていない。
「確かにIE 8は非常に大きな前進、一歩だったと思う。HTMLやCSSのサポートが大きく進歩したという意味でね。でもビデオ、アニメーションへの対応はまだだ。Microsoftは他社と比べて1世代遅れている」
各ブラウザベンダー間では、HTML 5のサポートについてのワーキンググループが定期的に行われているという。「Safari(の開発者)もChromeもOperaも、みんなMicrosoftに対して『21世紀にジョインしてくれ』と訴えている。ぜひvideoタグも実装してくれ、とね」
ドッツラー氏が「Open Videoのもう1つの側面」としたのは、ビデオフォーマットに関する内容だ。
「Open Videoのコーデックで重要なのは、その技術を1社だけが独占していないこと、すなわち特許にしばられていないこと。Flash、QuickTime、Windows Media。これらは人気のある企業が所有しており、使用料が発生する。訴訟されるリスクもあるし、企業はコーデックの使い方まで決められる」
Firefoxでは、ビデオはオープンソースコーデックであるTheoraを、音声は同じくオープンソースのVorbisをネイティブサポートする。また、Theoraの開発を支援するために金銭面での支援を行うことを発表している。
「やはり我々にはWebのために、オープンソースのコーデックが必要だ。VorbisはMP3よりも品質が高いし、TheoraもH.264と同程度のクオリティを提供できるまでに改善されてきている。1社が所有しているテクノロジーに“Webが頼る”ということは避けなければならない」
「2001年にIE 6がリリースされた。市場占有率は98%――ブラウザの時代は終わったと思った」。ドッツラー氏はそう語る。「でも2004年末にFirefox 1.0を公開してから数カ月後には、IE 6以降新ブラウザの開発が停滞していたMicrosoftに、もう1度新ブラウザを開発させることになったんだ」
「Firefox 3.5は夏にリリースする。年末までには3億人近くがVorbisとTheoraを使うことになるだろう。そこからさらに普及するには1、2年の時間がかかると思うけれど、Webの健全性を考えたら(普及は)今すぐでなくてもいい」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.